日々回避する

浜に打ち上げられた鯨
太陽に目を潰された土竜
涙に暮れた結ばれぬ縁辺
波間に浮かぶ異国の破片
白い教会に鳴ることのない鐘
陰を踏んでも風化しない死

脱皮の途中で息絶えたザリガニ
子宮の中で共食いされたシロワニ
度を越えたアルコールの嗚咽
度重なり自虐的な僭越
意味もなく上がる誰かさんの真似
聞こえてくるのはシャープの付いたシ

オランダに侵略され続けたミミナグサ
記憶にもなかったワスレナグサ
埋葬された美しき造形
舞い落ちる自閉への極刑
海底深く沈むウミネコの骨
ただただ言葉遊びのつまらない詩

雲に覆い隠された皆既月食
信じられぬほど冷たくなってしまう手の感触
繰り返し浮かび消える乳白色
埋葬された零れるような乳白色
あなたの手の感触
どのしも同じことだ
目を逸らすばかりのつまらない詩

日々回遊する

投稿者

岩手県

コメント

  1. 昇華しようとしても死なないですよね、死。

  2. あ、かぶった。昇華。

  3. コメントすることも回避したくなるほど、何度も読める重圧な言葉

  4. 乱立する雑多なイメージを、押韻で形式に落とし込むのは流石だな。シのシャープはドじゃんって思ったけど、Cじゃん!ってなって鳥肌立った。

  5. わぁショウ君にはかなわないな。そこまで読まれないかなぁと思って「ドのシも同じ」とか「ド重なる」とか入れてみたんだよな。「意味もなく上がる」ってほんとは意味あるんだよって。

    先週ちかくで鯨が打ち上げられたってニュースがあって、その日道端でモグラが死んでるのをみてそれを書いてたら、あ、韻踏んでるなと思ってこの詩になりました。
    シロワニはサメの種類、ココリコの田中さんが言ってた話で母サメの子宮の中で卵が孵化するのだそうで一番最初に生まれた子サメがほかの卵を全部食べてしまって1匹しか生まれない(実際は子宮が二個あるらしく2匹生まれる)という兄弟のなかでの弱肉強食があまりに衝撃で。

  6. 繰り返される乳白色に思いを馳せました。
    すごく好きです。せめぎあってる。

  7. 僕も乳白色に思いを馳せるなぁ。どんどん白くなる。日々回遊するんだ。

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