あなたに終わらない五月を

新緑の木漏れ日
雨上がりの朝
ひとの気配を飲む森
まぐわうように
愛をからませて吐く息
命の匂いに満ち満ちて止まない
そんな五月のように私たちが求めて止まないころ
得ようとしていたもの
おさなごの声はつたなくて強い
おかあさんおかあさん
洗いたての肌をすり合わせて
ひとつだったことを思いながら
それぞれであることを喜ぶ

私が喪ったものを思うとき
あなたのこころが泣いてしまう
ぼくはもうあのひとそのもの
ぼくは帰ってきただけ
かける言葉を層にする
やさしいひとやさしいひと
強すぎるときも前を向きすぎるときも
それでいいよと層を重ねて
強いふりをする
もっと音にするといい
先生
強さをもらえなかったぼくが
壊れた家で生き抜いてきたこと
褒めてくれましたね
五月のように生きはじめたい
命を浴び
緑にまみれ
陽射しに泳ぐ夏のいきものとして
こころに夏の思い出を住まわせて

五月のそよ風をゼリーにと詩った詩人
その詩人をリスペクトした詩人
その詩人と共に生きる詩人
その詩人と血を混ぜる詩人
やさしい詩人よ
あのひとにならなくていい
あなたに
終わらない五月を

*

投稿者

東京都

コメント

  1. 5月に上げようと思ってたのに6月になっちゃった。
    ぽえ会にこそ残しておきたい大切な詩なので、ちょっと語ります。

    立原道造さんが好きだったモーヌ。と、私と、私とまた命を始めた詩人と。
    この詩を書いた当時「あなた」はとても震えていて、息が出来ないように見えて。

    この詩を読んでくれたいくつものあなた(みんな)はしあわせですか。
    私が二人の子のお母さんになれたのは、生活に詩があったからで、ここでみんなに会えたから。
    ありがとう。
    いつも大切に思っています。

  2. よかったです。
    眩しいくらいに。
    生きることは色々な葛藤と喪失があるけれど、多くの愛によって5月のやすらぎのような赦しのような母体のやわらかな熱のようなそんなふうに昇華されるのですね。

  3. モーヌ。さんは、まごころを見せてくれました。名もない詩人たちに、自分は誰かに同じようにできるだろうか、と思うと。終わらない問いに、ただ迷う日々。

  4. いいですね、生命力があふれてる。ひとつだったことを思いながら それぞれであることを喜ぶ という言葉に唸り。あのひとにならなくていい~の〆に願いを感じ。

  5. 五月の頃の生命力に溢れる感じを、母としての思いや、喪失からの恢復のプロセスなどとシンクロするところがとても良くて力をもらえます。

  6. 五月を忘れた六月に読むことが出来たことに感謝します。
    新しいぽえ会にもぴったりです。運営頑張ってください!

  7. 詩人に囲まれた子供たちは、いつか詩人になるのかな。五月を書いた詩の中では、寺山を抜いてお気に入り一位になった。

  8. 命の、柔らかな受け継ぎを想ってみました。大切な命を受け継ぎ、その命を、いとおしい人に伝えていく。

  9. 王さん
    辛い時に思い出す詩の数々の中に『ラベンダー』があって、それは私にとって赦しなんですよね。
    あと、昇華って、いいですよね。

    timoさん
    バランスのよい距離感で見守って、時々言葉をくれて、ただ在ってくれるものって、ものすごくプレシャスだよなぁ、と歳を重ねるごとに思います。
    答えは出ないからとりあえず長生きしようと思う。

  10. りゅうさん
    子どもは母にくっついて、生まれた地を確認するのでしょうか。
    男性脳は母親を座標にし、それはいずれ妻に移るそうです。

    あぶくもさん
    水のようにありたいとも思うのですが、水側としてもたまに浄化しないとねーってなるので、まだまだ水にはなれないなあって。
    そんな中、力を感じてもらえて嬉しいです。

  11. らどみさん
    こちらこそ読んでくださって感謝です。
    運営ではないんですけれど、ぽえ会を知ってもらえたらという気持ちで、宣伝係しています。

    トノモトさん
    ものすごく光栄です!

    特に詩は啓蒙していませんが、長男のツッコミ力が何故か高いです。
    おしゃれに生きてくれたらいいなあって思います。

  12. 長谷川さん
    長谷川さんに頂く言葉は、植物にとってのお日さまみたいです。

    ただ愛するというか、大切に思う人を素直に大切にするというか。
    そこのところは難しいこと無しに生きていれば、世界はやわらかになるのではないかと、個人的には思います。

  13. うまくは言えませんが、あなたに終わらない五月をという終わらない詩と永遠の五月を思います

  14. まさに五月の詩人さんだったのだなあ、と思いました。
    モーヌさんと何度かお会いしたことを
    心地好い風のように思い出していました。

  15. ラベンダー、ああ覚えています。あれは暖かい気持ちと、そして少し嫉妬の詩だった。それこそポエ会がなくなったり、長い時間の末にみつからなくなってしまったな。
    覚えていてくれてありがとう。

  16. 五月の濃密な空気、それは確かに生まれ出るものの吐息なのだけど、同時に喪われたものたちの遺していった記憶でもある、と、そんなメッセージを僕はこの詩から受け取りました。

  17. 繊細でいながら強く、しなやかに生きてきた詩の道程が見えるような気がしました。温かく、時には厳しくもある愛に満ちて、内なる光に輝くたちまこさんの姿が、作品から立ち昇ってくるようです。

  18. たちこまさん、了解です。僕も拡がりのある方向性は良いと思うんです。ただ、ヘンゼルとグレーテルのようにあとになってパン屑を自己回収出来なくならないようにと思っちゃいました。要らぬお節介でした。ではでは

  19. あたたかいね。
    古くからある赦しの言葉みたいで、この詩にずいぶん救われたのを思い出します。

  20. こしごえさん
    コメントが詩の続きみたいで素敵。
    めぐるから何度でも五月を生きられるのだろうとも思います。

    nonyaさん
    詩人たちがお互いの色合いを羽衣みたいに見せ合いながら過ごした日々が美味しい空気のように思い出されます。
    また会いたいなあ。

  21. 王さん
    私は王さんの詩に嫉妬しますよ。
    また読みたいんですけれど、どこで読めるのかなあ。

    たかぼさん
    見えないですしエビデンスも無いんですけれど、作者はそう思っており「たかぼさん、すげー」と感嘆するばかりです。

  22. ひろこさん
    なんと美しい表現で褒めてくださる!
    詩人は、散文も書簡も絵も住まいも持ち物も身に纏うものも詩人なのだと、その詩人をリスペクトした詩人が言っていました。

    らどみさん
    攻殻機動隊、良いですよね。
    最近のは観てないのですがYMOチルドレンのコーネリアス(小山田圭吾)が音楽やってたりして。

  23. あまねさん
    あなたの詩に救いをさがす姿を見て、巣立ちを見守るような気持ちで詩を読み続けた日々なんかを思い出します。

  24. たちばなまこと/mikaさんの名前が長いので真似してカッコつけて馴れ馴れしく縮めたら、入力間違ってしまいました。ごめんなさい。コメント修正できないみたいなので、そこんとこをさりげないフォローありがとうございます。

  25. ナツコさん
    こころが透明になるようなコメントありがとー。(うれし泣き)
    私も関東なら五月が好きで、終わらない五月がもらえたらハグして受け取るなぁって思っております。
    上にも書かせていただいたのですが、めぐるから実は終わらないんだよなぁって気が付きました。

    来てくれる人たちをなるべく受け入れたいと思っているのですが、プールが狭いからすぐ濁っちゃっていけない。

    なつかしいな、ぽえけっとで販売したんだったかしら。
    そのとき初めてお会いする方々もたくさんいらっしゃいました。

  26. 〉もっと音にするといい

    〉五月のように生きはじめたい
    は、とくに印象に残るフレーズです。

    そして、理屈ではないものの伝わる終連から、深いいのちの物語の続きを思います。

  27. 服部さん
    いつも丁寧に読み解いてくださりありがとうございます。
    終わらせないように温めたいですね、物語。

  28. みなさんのコメントに、口元がゆるんだり、眼がじんじんしてしまうのでした。
    頭がキレキレで余裕があって優しくて個性がスパークしている、みなさんが大好き。リスペクトしています。

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