水色の空

何処から何処へ
幾多の声を水は流し

枯れた木の一片とそれは戯れ
黒い眼鏡の釣り人は上着を脱いで覗き込み
魚は気づいて隠れたようで
つまりそこには水はあり

何処から何処へ
幾多の声を水は流し

ぬめった苔をそれは洗い
てかった岩に赤が佇み
安らいだそれはてんと飛び立ち
青い帽子の釣り人はその頬赤くふくらめ
しなった長竿すくと立て

何処から何処へ
幾多の声を水は流し

男はそれを前後に臨み
無精髭持つ仏頂面をざぶと洗い
流れる声をすくい上げ
声はその手で立ち消え
しかしそこには水はあり
汗はぽつと輪をつくり
なじみなじんで帰途につき

何処から何処へ
何処から何処へ

海の寝床で黒くたゆたい
召される時をひたすらに待ち
柄杓の日射しが照り続け
見上げれば空

空には水

投稿者

千葉県

コメント

  1. 水の一生、水の循環。この水は何をあらわしているのかなあ。

  2. 王さん、ありがとうございます
    流すものと流されるもの全てが循環するんですかね〜

  3. よく湖、海、水たまりに空がミラーリングするイメージを、私もしますが、これは逆転していて、でもよく考えたら、蒸発していく水が雲に蓄えられるほうが、自然で。こっちが正だった!

  4. てぃもさん
    そうそう、全部蒸発して空が吸い上げてくれるから❗️

  5. 一行一行の語感が好きです。
    最後の締めも、壮観でした。

  6. まことさん、そう言ってもらえて嬉しいです。
    連用中止法からの体言止めをやってみた、のやつです。

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