静かな慰め
序詞
春の霞のたなびくころの
あけぼのに
ほの見ゆる色の
たちまちに
心を染むる薄紅の
長歌
薄紅の花のほのかに
昼の道かすめて洩るる
誰が呼ぶと知らぬままに
影よりそよと咲きいでぬ
朝ぼらけ我が身のゆくを
淡き色して迎へけり
灰の壁へ向かふ前に
ひととき心なぐさむる
やはらぎの風のおこりて
今日の始めを照らすなり
夕まぐれ待つと名づくも
その名のままにあらずして
陽の照る日影の深きも
おのづからなる色を保つ
ひそかなる花の開きて
静けさの奥に息づく
名を知られずと言はれど
紛らはしともささやけど
小さき花の胸の底に
ひとつの道のしるしあり
咲くべき時はおのづから
選びて咲くとしるるなり
反歌
薄紅の
花のほほゑみ
朝の道
灰の壁へと
ゆく身を照らす
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