帰ってきたヨッパライ

夜明け時、地上に根を下ろす花が、真夏の海岸で眠る酔っ払いの夢の中に現れてこう言いました。
「私は、花。この地上いっぱいにロマン咲く。雌蕊が受粉して実をつけ、花を咲かす。そこに本当のロマンやセンチはないの。でも、そんな私を見て歌を書くものがいる。それが、ニンゲン」

それを夢の中で聞いた酔っ払いが、こう呟きました。
「花じゃ、ダメだあ。ともに手を繋ぎ、話さないとお」

そこへ、一羽のカモメが、空から降りてきてこう言いました。
「私は、鳥。雨の日は、灰色の空を飛ぶ。空を飛ぶのは夢ではなく、日常。
決められた軌道に沿って飛ぶ流れに乱れはなく、上手くいっている時、私は飛ぶマシーン。
でも、そんな私を見て憧れを持つものがいる。それが、ニンゲン」

すると、目を覚まし開けて、それを聞いた酔っ払いがこう言いました
「鳥じゃあ、だめだあ。地に足をつけ、歩かないとお」

砂浜に流れ着いた石ころが、酔っ払いにこう語りかけます。
「私は、石。道端に落ちているオイラは決して、頑固者なんかじゃないのさ。
海を流れ波に揉まれ、流れ流されてここまできた。しかし、そんな私を見て魂を感じる存在がいる。それが、ニンゲン」

それを聞いた酔っ払いは、朝明の中で、こう答えます。
「石じゃあ、ダメだあ。心身体開き、笑わないとお」

ヨッパライが、帰ろうとしながら海をぼうっと眺めていると、海がこう語りかけます。
「私は、海。粒としての集合体として、動植物に場を提供している。そんな神として場を与える私に深く感謝とともに、畏敬の念を唱える存在がいる。それが、ニンゲン」

それを聞いた酔っ払いは波の流れに身の危険を感じながら、心の中で、こう唱えました。
「海じゃあ、ダメだあ。狭き世間を泳ぎ、渡らないとお」

ぼうっと、空を見上げながら正気へと帰りつつある酔っ払いに、空がこう語りかけます。
「私は、空。下界へと広がりながら。地上に風を送り海を作り、人々を応援する。貴方たちが輝けるように私は地上に楽園を作った。そんな私に対し、目を背けるものも、いる。それも、ニンゲン」

それを聞いて酔っ払いは、ハッと目を覚まし、我に帰るとこう語りました。
「空じゃあ、ダメだあ。日常へと帰り、働かないとお」

投稿者

静岡県

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