一通の手紙
久しく東京へ行っていない。
最初に訪れたのは銀座。
二度目は渋谷だった。
私は東京から遠く離れた九州にいる。
ここには東京ほど大きな街はない。
私の詩も、東京にいた頃とは少し違っている。
東京で線路のそばを歩いたとき、
私はかつて『線路の少女』という詩を書いた。
あの線路は、はるか遠くまで続いていた。
終わりを見ることはできなかった。
それから幾年もの歳月が流れ、
ようやく再び東京を訪れた。
その時に歩いたのは渋谷。
桜には出会えなかったけれど、
洗練され、美しく立ち並ぶ建物と、
日々の暮らしのために歩み続ける人々を見た。
きっと彼らの心の中には、
一面の桜の林があるのだろう。
それは雑踏の交差点には咲かず、
午前四時半、
眠ろうとしても眠れず、
思いを抱えた部屋の静けさの中で咲く。
久しく忘れていた花言葉のような
ロマンが胸いっぱいに花開く。
私もまた夜明け前まで眠れず、
九州で東京の深夜を思う。
あの街では昼と夜に
それほど大きな違いはないように思える。
夜でさえ、生命に満ちあふれている。
若さが輝くのは、
胸の中に花のようなロマンがあるからだ。
そのロマンは、
田舎にも咲き、
都会にも咲く。
私は心の中の東京を書きたい。
長いあいだ温め続けたこの一通の手紙を、
深夜まで書き続け、
人生で最もロマンチックな言葉を書き記した。
私はロマンを想い、
そして彼女を追い続ける。
彼女のために千もの詩を書いた。
彼女は振り返る。
愛らしい髪を結い、
「早く来て」と私を呼ぶ。
東京へ――。
彼女は塔の下で待っている。
私が髪を結ってあげるのを。
彼女が望むのは、
深く、美しいまとめ髪。
それは恋人のロマン。
少女の繊細な感受性と物思い。
そして東京が少女の想いに染まった、
忘れられない夜でもある。
街角には少女たちが並び、
誰もが甘い恋を知り、
恋人と恋に落ち、
歳月を重ねるなかで、
ロマンと風雅を知ってゆく。
一通の手紙には、
すべての想いを書き尽くすことはできない。
それでも人は、その手紙を懐かしむ。
なぜならそこには、
少年がこの世界に抱いたロマンと、
決して忘れることのない一人の少女、
そして二人があの頃ともに辿り着いた、
幻想的で、まだ誰も知らない東京が
静かに息づいているからだ。
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