顔をつき合わすのもお終い
流しの隅
氷水に浸る、すこし萎びた小松菜
腰を屈めて
冷蔵庫から引きだす、半端に残る夏野菜
「な、ガス台に両手鍋のってるで」
「あたしら、顔つき合わすのもお終いみたいやね」
プールの底でねむっていた野菜たちを
手際よく調理しながら
大鍋の火を点ける前に、音量を上げるナイター中継
大根と挽肉に生姜を効かせた
和風カレーの一皿へ
さっと茹でた小松菜を添えて
扇風機が回り続けるリビング
窓を開ける網戸越し、小さく鳴く
夜蝉と向きあう
むこう側と
こちら側を
私のシルエットはふんわりと舞い
幾何模様に似た不思議なすがたをして
往復している
コメント
この詩の、登場人物たちの、複雑な関係性が感じられる詩ですね。
この詩の、緊張感が、料理などによって、まろやかになっている感じがします。
新鮮で痛々しくて爽やかでユニークで日常の手触りを
最後まで失わずにひとつの節目を描き切った佳作です。
@こしごえ
様 へ
お久しぶりです、読んでいただいて嬉しいです!^^どうもありがとうございます。
桜散る頃から、とんと書けなくなりまして。言い訳はいくらでもあるのですが……。
何となし思いたって並べてみる詩のことばの恐さに、こしごえ様のコメントを拝読
して気付かされました。何の具体性は無くとも、書き手の背景にある事情が滲み出る
ものなのですね。だって、この作品は、どこにでもある晩ご飯のカレー一品を描いた
だけですから。このあたりが、やっぱり人間の書く詩かなと自分でも思えるのです。
@足立らどみ
様 へ
読んでくださり、お褒めのコメントをいただきまして、どうもありがとうございます!
自分では近ごろ……何を書いても、どんつきの様な気がして。書き始めると、それは
それで創作の楽しさを味わうことも出来るのですが仕上がってみると、ものたりない。
自分が現在において、いろんな意味で変わらないと作品も変わらない。いまは……
そんな時期を過ごしています。(◞‸◟)