ある夏

そいでさ金子がさお前に会いたいって言ってたよ
もしかして死んでんじゃないかってさ

なにも言わず足元のキーをひろって
軽トラをころがした

どこかで誰が泣いてる
なんてな
エアコンも効かない夏の妄想
窓をあける
磯臭い風
セミが降ってくる
大地が揺らぐようだ
息をしてるぜ

誰ともすれ違わないリアス式海岸
ローソンの駐車場で檻ごと熊を引き取った

誰もがどうすれば生きられるのかと思う
この先
生まれたときはそんなこと考えずに
ただ生きようとしただろうに
大きくただ生きると泣いただろうに
そして生きていただろうに

昨日は頼まれて家の片付けをした
トラックに積んで外れのごみ処理場まで
坂はえんえんと車が並んでた
行儀よく並んださ
暑い暑いってね

何年経ったろうかね
樺火が焚かれ
トンボが逃げる
遠くにさんさの声

トマトの畑だったところが
ノイバラの畑に変わってた
トマトは嫌いだったから別にいいんだけど

ノイバラはきついぜ
痛いし片付かないよ
手からズボンからぼろぼろだ
一日かかってドラム缶で燃やした

あちこち血が滲んだ

大雨が降るという
空を見上げれば
乾いた青
果てしなく薄く浅い青
静かな海

そして人は大雨がくるとわかっても
大雨を待てない

つれて帰った奴の眉間を
眠ってるうちにうった

投稿者

岩手県

コメント

  1. 足元にキーがあるんだなぁ。

    情景を咀嚼しては北の空の色を懐かしく思ったりしました。
    5連目のことを今日は考えて過ごします。

  2. ある夏、の出来事が、たしかにそこに在る。繰り返される夏だが、それは、二度と 繰り返されない 初めての 夏でもある。

    ところどころに、印象深い 表現が成されているけれど、次の ここが 特に好きです。

    セミが降ってくる
    大地が揺らぐようだ
    息をしてるぜ

    生きている、生きているんだなあ、と。

  3. 歳のせいか涙腺緩んでいるのか、金子はおれじゃねーかと目頭が熱くなってて会ったこともねーのにさって滑稽で。
    熊本は10年経ってまた暑い今日、15年経って東北の盂蘭盆会に、帰って来やがった、蘇りやがった。

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