天空モノレール その2
喃語が好きだよ
静寂をまあるくひらく
空を流れる鉄道で
お仕事帰りに骨抜きにされる
いつもより空が近いから
おともだちがのぞきに来たのかも
静かな車内にぐずった声が浸透してゆく
日が長くなったなぁ、というふりをして
声の方に目をやる
そんなときはお母さんの表情が曇っている
泣いたって何したってかわいいから大丈夫
ありったけのねぎらいで
目尻を下げることにしている
モノレールは羽田で乗る特別な乗り物だった
多摩に根を下ろしてからは
暮らしを流れている
誰かのおなかからわるいにおいがしたときに
思い出したりする
川を下り眺めた天空へ続く編成に
誰かの大切な日常が
ひかりの尾を引きながら
いくつも発射され戻ってゆくのを
見上げた日
誰かの赤ちゃんを抱っこしたときの
懐かしいにおい
むすんでひらいた小さなにぎりこぶしから
生まれた星を内緒で受け取る
ベビーカーから乗り出して
元気な声でお姉さんを誘ってた
あの子
春から高校生
コメント
天空モノレールという特別な乗り物に乗っている話者の温かくやわらかな まなざしがすてきです。
ちなみに私、モノレールは今までに2回乗ったことがあると記憶しています。
ことばの端々を作者の日常に繋げる空想の連結をやめた時、モノレールは形而上の高みに飛翔していきました。
リアルとファンタジーの融合のような詩だなぁと思って読んでいて、ふと気づく。
7歳までは夢の中と言われる子どもの世界もリアルとファンタジー、お空とこちらを行ったり来たりしてるんだったなぁと。
読んでいてほんわか優しい気持ちになれる気持ちのいい詩でした。
誰かのおなかからわるいにおいがしたときに
戻ってゆく
意味があって、戻ってゆくという事をまばゆい光を見つめなければ自分を保てないな、と思いました。
二連目、いいですね。
日が長くなったなぁ、というふりをして/声の方に目をやる
作者の、優しさ、柔らかさが表れています。
モノレールって、何だか出発するとき、ワクワクして楽しいですよね。空を流れる鉄道という表現、いろんな人の日常を載せて空を走っていると思うと、素敵ですね。遠い日の温もりや、新しく何かが始まっていくようなエネルギーを感じました。
日々の過ぎていくさまがキラキラとしていて、果てしなく優しいミルキーウェイのようなだと感じました。きっともっと現実的であったものが、夢物語であったかのように美しく輝いて見える。過ぎ去ったからこそ到達する表現なのかもしれない。いろんな情景や想いを感じて心が震えました。
こしごえさん
ありがとうございます。
モノレールに初めて乗ったのは12歳の時、北海道から関東の親戚のお宅に訪問した時だったと思います。(東京モノレールはとても揺れる)この詩のモノレールは穏やかなモノレールです。
babel-kさん
インテリジェンス溢れるご感想ありがとうございます!
形の無いものを形に残す試みは大好きです。
あぶくもさん
心地の良いご感想ありがとうございます。
子どもから新しい視点をたくさん教えてもらいました。
幼い頃はまだちがう世界と繋がっているように見えるふるまいしていたような。
かさねさん
作者が驚くような視点をありがとうございます。
いったりきたりする…いつかは帰る場所、ニ度と行かない場所、会えなくなった人などを痛みを伴って思います。
ナツコさん
そうなんですよねー。小さい子、怖いだろうなーって思います。大人だって怖いのにね。
マスク生活になって、目力というか目で感情を表す力を磨かざるを得ないですね。
長谷川さん
やさしい気持ちで読んでくださって嬉しいです。
未だにどこか照れてしまうので出来ればお母さんに気づかれないように微笑むしか出来ないのですが。
みんながやさしさを行使できる世の中だといいと思います。
あああさん
こちらこそ!
ありがとうございます!
ayamiさん
ご感想いただいてうれしいです。
ありがとうございます。
今のところ日常使いで世界一銀河鉄道に近い乗り物かなと思っておりまして。
私も未だにワクワクします。
ザイチさん
ありがとうございます。
私はミルキーウェイの語感も意味も好きで、ザイチさんからこんな素敵なご感想いただけて嬉しすぎます。
生きている間は忘れずに、誰かに伝えたいときはこうして詩にしたりして、誰かに届くといいなといつも夢見ています。