男と女と生と性
男は逆説の世界で眠り
リベラリズムを物語る
実際は鉄柵に凭れる犬
下半身では堪え切れず
非常識な錆色の恥から
ささやかな自愛と共に
垂れ流す日々へ敬礼か
磔さえ素敵に味わう男
女は欲望の誓いに浸り
ストイシズムを裏返す
本当は倒錯に跪く巻貝
無慈悲な表情は内側へ
優しく疑似餌を与えて
ひそやかに憂うばかり
突き落とす腕は嫋やか
奇怪なポーズで踊る女
生は四次元に有り触れ
神経の末端で叫ぶ解放
欠片から最期を煽って
また繰り返す美学の嘘
相似形の永遠は秒刻み
気を抜く隙間もないし
転がる余裕も勿論ない
それでも簡単に熟す生
性は不機嫌な瞳を願い
湿度の高い部屋で疼く
全体から痛みを譲って
この連続は開閉の冥利
低速でも絶頂は訪れる
やるせなく弄ぶ夢遊や
さりげなく放置する裸
いつも一瞬で見破る性
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.042: Title by 神田唯]
コメント
酒と泪と男と女みたいなタイトルをここまでかっちりと、それこそ性だな。
河島英五と趣は真逆だけど内容を見れば同じか、ということはこのフォルムには関係ないんだろうな。
硬質な十文字の文を量産する馬力にいつもながら感心させられます。
トノモト詩、炸裂って感じですよね。
クールの誕生、です。
それぞれ独特な 男と女と生と性 ですね。それぞれが、人生上で重さを持っている詩だと感じます。
いつもながら、紙面の構成がきっちりしているところもすごいです。視覚的な効果もありますね。
かっこいい行がたくさんあります。
“ 低速でも絶頂は訪れる”
なんか成熟を感じました。