玲瓏剔透グライダー
幾杯もの血を溶かしたあの空は
未だ残酷な程に透き通っていた
嵐が過ぎ去った後の世界で
元通りなのはあの空だけだ
歌えよ
恐れることはないさ
あの空がまだある
鯨がまだ空を泳ぐ
離陸したその船は
太古から受け継がれる怨嗟を吐き出す
「知らんよ、そんなこと」なんて言えないのは
身に覚えがあるからか
泣けよ
恐れを抱いて平伏せ
あの空が堕ちれば
飛空船の息吹
偽りの星、重なった月
前触れもなく綺羅星は大地を割り
黒い嵐が街を呑み込む
戦は終わらないか、憎しみは終わらないか
仰げよ空
それしかないだろう
そして滅びを止めに行こう
鯨と空が堕ちる前に
コメント
方舟の世界が此処に…。
空飛ぶ鯨。鯨は飛行船を連想させられました。その爆発を。確かにヒンデンブルク号は鯨に似ているなと思いました。
かっこいいなぁと思いました。
命令形に少しの悲しさや愛があって、最後の鼓舞も胸熱です。
声に出して読みたくなりました。
「仰げよ空
それしかないだろう」
にまったく同感でございます。
詩全体がかっこいいです。
壮大なサーガのような。かっこいいだけじゃなくところどころに散りばめられた熱い情感がなんとも素敵でした。
みなさん同様まずはかっこいい!って思いました。「戦は終わらないか、憎しみは終わらないか」これは疑問なのか、いや諦めなのかな。その答えが「仰げよ空」ってのが、また一段と決まってる。
この詩を拝読して、この詩は、悲しみの透きとおった 詩だなあ、と感じ入りました。
でも、その悲しみからは、悲しいだけではない、ゆるし、みたいな安心感も覚えました。
仰げよ空
それしかないだろう
そして、私も、ここがいいなあ、好きだなあ、と思いました。
これは、とある世界の名も無き彼らへの手向けの詩です。
理不尽に抗うため、壮大な理想のため、多くの人がその身を投げ打ちました。
しかし夢は叶うことなく、残ったのは荒廃した大地のみ。
それでも、皆の一時の安らぎために立ち上がり続ける彼らへ。