オリーブグレーの距離

 湖岸県道の交差点
 百貨店の正面出口前、
 空には消費の季節を告げる
 ピン留めされたヘリウム詰めの原色が
 色褪せながら膨張していく球体
 陽は傾きかけた週末の喧騒

 雑貨屋のロゴマークが目を引く
 封印シールにリボンをあしらった
 花柄の紙袋
 身を屈め手渡してくれた
 スーツの袖に光る
 オリーブグレーのカフスボタン

 目の高さを合わせる視線は
 掴まれた紙袋へ注がれてから
 からだを包みこんでくる
 長い両腕がまとう肉親の匂い
 その広い背中をつかんでみるけれど
 抱きしめ返すこともできなくて

 側に立つウィングチップの靴先は
 横断歩道へ向きつつも
 また点滅するシグナル。
 あの日も、父は帰って行く
 横梁の骨組みの上に固定された
 木製の古い床版を踏みながら
 渓谷に架かる吊り橋で振り返って

 

投稿者

滋賀県

コメント

  1. この詩の全体が、リアルな情景を連ねて、言葉では表せないような詩の言葉となっています。

    オリーブグレーのカフスボタンが、光を放っていますね。

  2. これはかなりドラマティックですね。
    父との記憶が風景や父の服装などからリアルに関係性を含めて匂い立ってきます。
    一連目はかなり小さな頃でしょうか、百貨店とアドバルーンの風景に、二連目以降は少し成長した思春期くらいから大人になってからの記憶でしょうか、限られた時間だけの面会のような、別の家庭など複雑な状況を想像しました。

  3. @こしごえ
    様
     読んでいただいて、ご感想のお言葉を寄せてくださり嬉しいです!
     これは過去作の原稿が「信号機」というタイトルでした。
     改訂してディテールはちょっと脚色されています。^^
     いつも本当にどうもありがとうございます。励みになります。

  4. @あぶくも
    様
     丁寧に読んでくださって、ご感想のコメントもどうもありがとうございます!
     この原稿、自分では好きなのですが……ただ例えると、ちょうど快晴の琵琶湖
     大橋を軽自動車で渡ってしまう感覚かも知れません。同じ直線のわかりやすい
     構成でいくなら。ロードバイクのペダルをこいで、どこかで見たフレーズですが
    「ふやけた藻と、ぬるいブリキが混ざり合う匂い」の湖面の風を身に受けながら
     渡るといった、綺麗にまとまらない批評性が必要なのだと思います。それかいっそ、
     ミズノのテレビCMで青いジープが豪快に砂煙を上げて荒野地帯を走っていたような
     「わけわからないシュルレアリスム」を挟み込んで、もっと書き手や読み手を付き
     放す展開が必要なのかも知れません。^^ またいつか改訂します。

  5. 読んでくださいました方に誠に申し訳ございません!
    気になっていた箇所を、ちょっと改稿いたしました。

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