日常しぐさ

二十二時前
閉店間際の近所のスーパーに
ぎりぎりで駆け込む
Tシャツ短パンすっぴんで
4リットル分の
空っぽの専用ボトルを抱えて 

半額シールが貼られている品を
一通りチェックしてから
いつも通り無料の水を注ぎ込む

両手に水をかかえ
階段を上っていると
重そうですねと声をかけてきた男の人
こんばんは
こんばんは
児童館で時々目が合うと思っていた
子どもつながりのパパだ

言われてみれば重いです
それ、美味しいんですか?
美味しいです

数ヶ月後には
月一ホテルにしけ込む仲になって
セカンドパートナーってやつらしい

あの夜のこと
エントランスでの立ち話
初めてお互いの目をちゃんと見たこと
ペットボトルのラベルの記載
不純物を含まない「純水」
恥ずかしくなった
いくつかの質問と答え
バルコニーに出て何回も深呼吸して
二棟のタワーマンションの間に浮かんだ
まんまるの月

無料なら 
とりあえず貰っておく自分だけど
そんなことを
たまに思い出すのだ

投稿者

東京都

コメント

  1. またリアリティある物語ですね、堪能しました。無料の純水(純粋)、有料の不純。無料(タダ)より高いものはない、のでしょう。まんまるの月の冷徹さが詩全体の日常と非日常の表裏を引き立たせています。
    しかし、ああやって声かけるんだーって3連目、参考にさせていただきます!(笑)

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