プール開き

雨戸の中に
カステラがある
プール開きの日に
そのことを知った

 辞書を捲るたびに
 辿り着く草原があって
 わたしはそこで
 辞書と再び出会う
 辞書はわたしを捲り
 辿り着いた草原で
 三度わたしと出会う

 わたしはどきどきしながら
 辞書を捲るのに
 わたしを捲る辞書は
 いつも退屈そうだ
 大したことなど書かれていない
 昔からずっとそうだから

プールサイドで一斉に
ラジオ体操をする
 足を開いて胸の運動
 イチ、ニイ、サン、シ
 ニイ、ニイ、サン、シ
それから一斉に飛び込む
 さあ、泳げ、このままずっと泳げ
 この水は自由の国アメリカまで続いているぞ
体育の教師はこの秋に結婚するという
だからだろうか
病院の食堂オアシスのポークカレーには
サラダがついていた

夜になっても自動精算機の順番は
回ってくる気配すらない
待合室には診療を終えた患者が滞留し
 今日はプール開きの日だったのに
 自由の国アメリカに行けないじゃないか
などと口々に呟いている
わたしは雨戸を開ける
懐かしい人が
カステラを持っている
金属製のフォークが
月明かりにとぅるんとする
 おかえりなさい
そうか
わたしは帰ってきたのだ

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