地層

学名 Poetismia poenoi は一属一種
世界で四個体しか確認されていない
一個体目は
袋小路の祠の奥に
二個体目は
庭木の鳥の巣箱に
三個体目は
納屋の天井裏に
四個体目は
ブナ林のうろに生息していたが
研究者に捕虫網を振り回され
行方不明となった

巣箱に生息する poenoi は
天気の良い日は
全ての poenoi がそうするように
巣箱の屋根の上で
シャボン玉を飛ばしている

poenoi の飛ばすシャボン玉は
しばらく風に漂うと
近くや遠くで
虹色の飛沫となって弾けた

poenoi が飛ばすシャボン玉の
虹色の飛沫は
貴方の心を鋭く打って
リンドン鐘を鳴らしたり
チリチリ鈴をふるわせたり
静かな波紋を起こしたりする

poenoi は歌いたくなった
るりるーと歌ってみたが
思ったように気持ちは晴れず
またシャボン玉を飛ばした

淋しさに追い立てられるように
シャボン玉を次々飛ばしていると
鳥の飛脚が届けた手紙が
poenoi のもとに
空から舞い落ちた
行方不明になっていた
四個体目の poenoi からだ

「逃げ延びた深山の果てに
未だ確認されていない
Poetismia poenoi の生息地を
発見し候
百個体程が仲睦まじく
シャボン玉を飛ばしおり候
我らもそこに合流し
安穏な生活を送るで候」

祠住まいと納屋住まいの poenoi は
すでに深山へと出発していた
巣箱住まいの poenoi は
ひときわ大きなシャボン玉を吹くと
その中に入って仲間の後を追った

巣箱は空っぽになり
Poetismia poenoi が
シャボン玉を飛ばす姿は
もう見られない
美しい飛沫は
遠く遠くの地で
きらきらと
石英砂の如く
川の底に降り積もり
やがては
Poetismia poenoi が生息した
証の地層となる

投稿者

大阪府

コメント

  1. ぎゃー!
    この詩めちゃくちゃ好きです。
    (失礼しました)
    2連目の生態に骨抜きにされ、
    最終連の証の地層になるところでほどけてゆきました。
    るりるー

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