夢見ることを夢見る
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青い葉を握る僕の手に、きみの指が重なる夢。毎朝復元しようと思いながらイメージに言葉が重ならない。走り去る影だけが伸びてゆく。影のふもとから歩く。
日々は悲惨かもしれなかったけれど、言葉遊びの要領で伝言を残し、わざと迷子になる。日が暮れても見つけてもらえなかったら、月の下で一人で明日を映写する。
唐突には現れてくれない。だからけなげにスケッチでひとコマずつ描く。次の展開を考えていたら現実はコマーシャル。ほんの数十秒なのに泣いていなければならない。
それでも影のふもとから影の先を目指している。言葉で何百個も金庫を開けていかなければ。金庫の中には時々次の入り口への鍵が錆びついていたりする。
青い葉を摘む僕の手を宙に広げる。手のひらは寂しいから運命線がない。
それでもきみの指を夢見ることを夢見る。
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コメント
何百個も金庫を開けるくだり、映像にしたらとても美しいだろうと想像しました。
悲しみを帯びた砂金が降るように優しかったです。
たちまこさん、ありがとうございます。昨夜はあまり気に入らずに読んでいたのですが今朝読むと綺麗で優しいので幸せな気持ちになりました。