月光のドレープ
つま先から毛穴を撫で上げ膝をくすぐり
それぞれの頂も唇も睫毛もかすめて
閉め忘れた布間から白い手を差し出し
整った染色体を揺らす
生まれ変わったいくつかの細胞から
くるおしい声が沸き立っている
漆黒からのターン
4.5匁のオーガンジーに包まれ
やり散らかした裁断パーツを炎にくべたくなっても
耀る指先で
私たちは乱れているから
赦されたくてしかたがない
光るあなたをバイアスに裁ち
ドレープをトルソーに留めて
いっそ朝までも
午前1時
君は小舟で凪に浮かぶ
翡翠の魚を糸で誘う
コメント
具体的な情景を思い浮かべることが出来ないにも関わらず、何とも言い難い色香?エロス?を感じます。これが詩というものなんでしょうね。俺のはただの独り言だ…。
たちまこさんにしか書けない職✖️官能の詩世界。新しくて絶対的に正しい官能を感じることができました!
BENIさん
コメントありがとうございます。嬉しいです。
自律神経の乱れから真夜中に覚醒してしまったのですが白い月光が辺りを照らしてそれがシルクオーガンジーに見えて綺麗だなあって思ったのです。オーガンジーは透け感があるので確かに色っぽい生地です。
ナツコさん
音楽に例えてもらえるなんて光栄です。
何かをつくるということはみんな共通点かあるなと思うのです。
詩を書き上げるのもどこか孤独な作業ですよね。
あぶくもさん
あぶくもさんにコメント頂けると気分ぶち上がります。
職×官能って字面がもうおもしろいですね。
生活には官能の種が散りばめられているので私もこっそりあちこちに植えるのが好きです。
職業病とも言えるけど、月光に照らされる夜空がドレープに見える視点って特別だな。料理人ならフィットチーネに見えるだろうし、漁師ならワカメに見えたりするのかも。あぶくもさんが言うように、官能にも感応するたちまこらしさが言葉の隅々に表出していて素敵でした。
ドレープや、オーガンジーや、トルソーや、使ってみたい言葉がたくさんあるけども、自分が使うと説得力がまるでない、やっぱりアイデンティティが出ますよね。
トノモトさん
こんな素敵な解説を無料で頂いていいのでしょうか。
感じる人によって音楽になったり絵画になったり。いにしえの人たちが残してきた月光もそれぞれの形をしていますね。職人ならではの言葉遣い、楽しみます。
timoさん
ありがとうございます。
説得力はニュアンスでカバーしちゃってオッケーなんじゃ無いかな、自由でいいんじゃないかなと思います。
しかしながら、その業界人だけが知る専門用語ってたまらなく惹かれます。
最終連目、いいですね。翡翠の魚を糸で誘う。「午前1時」とも相まり、読み手をそっと招きます。…艶やかな招き。