約束

テレビの中で
人々の行き交う雑踏の渦に
少年は独り立ち尽くして
涙をこぼしている

「なんで僕はここにいるの?」

私はテレビの外から
少年に音の無い声で語りかける

「 この世界に
放り出された君は可哀想なのか?
地上にいる意味はあるのか?

君の名で生きるのが一度なら
探してみないか
遠い過去から
交わされた約束を 」

私の声は届かない
けれど
少年は一度
こちらをふり返ってから
涙を拭いて、歩き出す

──心の方位磁針の指す方へ──

少年は何処からか奏でられる
ピアノの音を
風のまにまに聴くだろう
鼓動がリズムになるように
歩調が旋律になるように

私はテレビの外から
見守っている
明日へのびる道を歩み始め
段々小さくなってゆく
少年の背中を

投稿者

東京都

コメント

  1. 四十を、過ぎ、それでも迷う日々を過ごす
    そんな世界に少年を強く育てるために
    世相をなんとか泳げるように
    見守る

    俺たちは、約束を破り
    忘れかけた時に
    その約束を守り始める

    手遅れでも、寂しい日々でも
    受け入れられない今日とて
    生きていくしか無い

    生きるしか無い

    振り返り、涙を拭き
    強くなる

    少しずつ
    少しずつです

    感動しました

  2. サイレント・マジョリティというのかな。実際には関われないけれども、サイレントの中にこそ柔らかく見守っている人たちがいる。社会のそういう「想い」を信じたいです。

  3. 那津さん 日々の実感が伝わるような、詩的なレスポンスをありがとうございます。

  4. 長谷川さん サイレントの中にある密かなまなざしと、それを受け取る人のいることを信じたいです。 ありがとうございます。

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