眼
テーブルの上
画用紙の切れ端が無造作に
置かれている
切れ端の隅のほうに
眼が片方だけ描かれている
鉛筆で精巧に描かれた右眼だ
女性だろう
どこを見つめているのか
焦点が微妙に合わない。
幾日か後
再びテーブルを覗いたら
左目が
切れ端の真ん中に描かれていた
今度は正面から
こちらをじっと伺っている
怒りだろうか、不安か、渇望か
戸惑った末
画用紙を裏返した。
テーブルの上
画用紙の切れ端が無造作に
置かれている
切れ端は真っ白なままだ
今まで考えたこともなかった日々との
邂逅を
想像してみた
画用紙の脇に、一本の鉛筆
部屋には誰もいない。
コメント
読者の勝手な想像で、母娘あるいは母と息子の、直接の会話ではない対話のような風景を思ってみました。すべての時間を共有し、言葉にして触れ合っていた親子関係は、やがて子どもたちが大きくなり、それぞれの適切な距離感を互いに探りながら育んでゆく。その母の眼差しのようなものを想像すると、グッと来ました。(まったくお門違いな想像してたらごめんなさい)
@あぶくも
あぶくもさん、そういうふうに読んでいただけるのは、作者冥利に尽きます。なるほど、…親子関係。とくに、母と息子で捉えてみると、物語が深まっていくかもしれません。
コメント失礼いたします。
なにか、誰かを待たせているような、約束を忘れてしまっているような、黒いぽっかりに覗かれているような、そんな想像をいたしました。
とてもピリピリした心地になりました。
眼、視線、というものは、チリチリする感じがいたします。
そして、何かと向き合っているイメージも湧きました。
自らその鉛筆を手に取れるのかと、自問をしてしまいます。
うまく言葉にできずすみません。
@ぺけねこ
ぺけねこさん、精密に描かれた右眼だけの鉛筆画をたまたま見まして、その画が強烈で、その鉛筆画からイメージを広げて書いてみました。まさにピリピリした心地でした。何だか、心の奥底を覗かれているような、ちょっと後ろめたい心地もありました。視線、眼差しは、怖いですね。
机の上に残された鉛筆で片方の口角だけ上げた唇を描いたら、次の画用紙には細めた右眼が描いてあったりして。。。イメージがどんどん広がっていくような糸口を感じます。
@nonya
nonyaさん、眼からイメージを広げていきました。人の表情までイメージを広げていったら面白いですね。口元、唇も、興味を惹きます。そちらのイメージで、またひとつの詩が書けるかもしれません。
最期の二行の余韻に酔います。。。
酔えるのはそれまでの内容が芳醇だからだと思います。
@佐藤宏
佐藤宏さん、ありがとうございます。自分だったら、どんな「眼」を描くだろう…? そんな想像を込めてみました。たまたま、精巧に描かれた右目だけの鉛筆画を目にしまして、そこから詩のイメージを膨らませたところがあります。