ヒラカレタ
開かれた世界、
平明な海のただなかにある、
香りも、イチゲの花も、すすみきて開く、
夜叉も、北国の森も、
発電された幸福の通り抜ける雪景色、
それはまるで、わたしのために、
開かれた世界、
垂直に立つ針葉樹の世界、
理解されて、呼吸の通り道、おそらく百様の、
ビビット、うちふるう葉の、その息の舞い上がるさまを、
ひそかにあつめて、
ひのひかりのななめにさす、
この世界はこの世界のままに、開かれる、
ひそかに踏みしめて、やわらかな苔のうえを、
行くのではない、行こうともしない、
ささめいて、ひろがる草の静けさが、
おおくの黙礼と、血のぬくもりのありかを、
感じとるものは、肉と欲望と精神を、
永遠にひそませて、永遠に飛び込もうとする、
ここはそのままに、
開かれた世界、
たましいはすでに、さわやかな香りを吸って、
笹藪のまわり道から、
届かないミッションを告げようとする、
胞子である、わたげである、霧氷である、
見ているものは、信じられたものである、空も、
手はそれをつかみ、足はそれを踏みしめ、
あくなきよろこびのかさなり、
ひとりづつの世界へ、はいっていく、
かわしながら、かげろうのなみのように、
そこはすでに、
開かれた世界です。
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