消えない光
瞼を閉じて見た景色のスペクトル
ぼくはハイペリオンの木の陰に潜み
宇宙や、その先の向こうの異星人を呼ぶ
そちらに天気はありますか
そちらに暴力はありますか
爪切りは、瞑想は、エロ本はありますか
その答えを聞くまでもなく
街に朝が訪れるまで
ぼくは眠るよ、笑っちまうほど
なあ、
うん、
もし生まれ変われるなら何になりたい?
そうだなあ、なんか新しい概念がいいかなあ、
概念って、どういうことよ、
例えばさ、エコって概念は太古からあるわけじゃないでしょ、
ここ何十年かの間に生まれた言葉かもな、
誰も考えなかったことが当たり前になるような、そんな未来の概念になれたら素敵でしょ、
そうかなあ、面倒臭そうだけど、
だったらあなたは何に生まれ変わるの?
そりゃあ、もちろん、光だよ、
熱線に焼かれるこの惑星の端々で
今日、深淵から放たれる魂たちの息吹
アーキタイプの成れの果て
くしゃみをすれば飛んでいくくらいには
重みがないのは知っている
だからぼくらは手を伸ばして虚空を掴み
生きて死んでいくことを諦める
逆行する未来からのエントロピー
ぼくはプロメテウスの火を吹き消し
宇宙や、その先の向こうの異星人を脅す
こちらに哲学はありません
こちらに美意識はありません
永遠も、無限も、常しえの愛もありません
ただ光だけがある、と うそぶくのさ
ただぼくだけが
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.084: Title by RYU]
コメント
タイトルを見て最初に頭に浮かんだのがThe Smithsの『There is a light that never goes out』だったんだけど、そんなぼくのイメージを遥かに超えて、トノモト氏の視線は宇宙の彼方に向けられていたのであった。
この詩、好きです。
易しい言葉ですけれど含まれているものは多く、かえって複雑とも思えます。
無いことはネガティブなだけではないと気付かされます。
ちりばめられたキーワードに繋がりを求めて僕はタイタンまでやってきた。ご存じ土星の第6衛星である。太陽系で地球の他に唯一大気を持つ衛星であり、カート・ヴォネガットが妖女に出会った事でも知られる。だからハイペリオンはダン・シモンズのそれではなく、土星の第7衛星の事だと思うんだよな。プロメテウスはもちろんタイタン一族のスターだし。ACクラークとキューブリックは木星を目指したけれども、トノモト氏はさらにその外側の土星を目指したってわけだ。たしかに土星の方がちょっと格好いいよね。地球からはたった80分で行けるよ。光ならね。
生まれ変わるなら光。
これだけでノックアウトでした。大覚アキラさんはタイトルからThe Smiths、私は感覚だけで、小沢健二『ある光』が浮かびました。
ただ光だけがある、と うそぶくのさ
ただぼくだけが
! 消えない光
なんか哲学とか観念とか、物理学みたいなものさしがないと、平易で良いですね。それにこのスペースシップは安堵でできている。