コーリング
それは大都会の高層ビルの頂上から、
下界を見る時に、現れる、
当然、親密な関係ではないのに、
〈あかり〉はすでに、泥の干潟、陸上へと這い上がろうとしている、
地球生物の物語の、そして砂から作られた一篇の詩のように、
わたしの胸の肉の内部には、
神経から招かれて砂丘へとつづく、
アジサイの花の周辺から、
わずかづつ曲がってつづく、細い園路、
季節の氷菓は満ち足りている、砂漠のように、
ユーラシア大陸のソファーのように、
言葉は混じり合い、それぞれの記憶は風に追われる、
〈つみびと〉、それは恋しい人、
恋しい人の〈あしうら〉を抱きたくて、はだかのままで、
〈じょうじ〉、そして情事と呼ばれる、あられもないからまり、
その行為のさだなかに、コーリング、
わたしを呼ばないでください、
みっつの石が手からこぼれる、
やって来る船の着く場所は砂のままで、そのままで埋まる、
砂のままに埋まる、
放棄されて、傷んで行く物語、そのままに、
カヤックの人はその唇を噛みしめる、
桟橋の人は錆びついた約束を遠投するだろう、
そしてモダンな肉体、その肉体からの緻密な計算を、
ランチの店では、すずしげな白いシャツの、胸をひろげ、
そしてあなたは、コーリング、
波のように、聞こえて来るのは、つかのまの、
やや高く空の方へと、のびあがる、
波と砂の町の、
〈かいばしら〉
の料理です。
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