夏の終わり

漆黒の空の隅に
打ち上げられた花火

両腕で抱きしめられそうなほど
小さな明かりだけれど
それはとてもいきいきと輝いて
懸命に、一瞬のいのちを
燃やしているようだった

夜空を無心に
のぼってゆく光
ひらいた瞬間はじける輝きは
次の瞬間
まるで幻のように
闇夜に消えていた

どんな花よりもはかなく
けれども美しく
きらめきながら
散っていく花火たちを

ただ、心にそっと閉じ込めて
わたしたちは
二度と戻れない夏に
さよならを告げた

そうして
夜空にかかった
ふっくらとした
檸檬のような半月を見上げながら

すっかり人気のなくなった夜道で
虫たちの歌声に
耳を傾けると

いつしかわたしたちも

まだまっさらな秋へと
ふみだしていた

投稿者

コメント

  1. 終わりは始まりなのですね。
    哀愁とともに喜びも生まれる心地です。
    季節のうつろいがとても好きです。

  2. @ぺけねこ
    ぺけねこ様
    このたびはお読みいただき、コメントもお寄せいただき、ありがとうございます。
    いただいたお言葉全て嬉しかったのですが、
    特に「終わりも始まりなのですね。」というお言葉が、まさにこの詩のテーマ(?)でしたので、
    とても驚くと同時に感激しました。
    素敵な言葉のブーケをありがとうございました。

  3. 夏の終わりは、独特の、切なさ、寂しさがあります。その想いを、花火に重ね抒情的に表現されていますね。終わりは、始まりでもあります。…自然、物事の摂理。

  4. @長谷川 忍
    長谷川 忍様
    このたびはお読みいただき、コメントもお寄せいただき、ありがとうございます。
    「夏の終わりは、独特の、切なさ、寂しさがあります。」というお言葉、本当にその通りですね。
    なぜか不思議な情緒のようなものがあるように感じます。
    「終わりは、始まりでもあります。…自然、物事の摂理。」というお言葉は、
    それ自体が新しい詩になりそうな、そんな胸にぐっとくる響きがしました。
    素敵な言葉で紡がれたコメントをありがとうございました。

  5. こういう詩を読むと、嗚呼やっぱり日本に生まれて良かったなぁとしみじみ思いますね。大いなる循環の有り難さ、奇跡みたいなものと、我々の心情が呼応する様が行ったり来たりしながら沁みてくる心地です。

  6. @あぶくも
    あぶくも様
    このたびはお読みいただき、コメントもお寄せいただき、ありがとうございます。
    いただいた「大いなる循環の有り難さ、奇跡みたいなものと、我々の心情が呼応する様が行ったり来たりしながら沁みてくる心地です。」というお言葉、とても素敵で、詩的で、感じ入ってしまいました。
    心に沁みる素敵な言葉たちを、ありがとうございました。

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