愛の工場
けだるくて死にそうな夜に
彼はひとつの『復活』を経験したのだ
じっさい人はそのようにして「愛の工場」を知る
ペリカンたちが舞い降りて来て
夜の噴水のあたりはすでにあふれている
なげだされた君は腕の中に倒れた
それはエリーゼ宮の長い廊下のさらに奥である
知っているものは、金の飾りのついた重たいカーテン
そしてくちづけをされて
君はそのときすでにペリカンである
愛というものはすでに皮膚をめぐる
それともそれは肌のすきまをめぐる
絹のような言葉で、君をとろけさせよう
胸のあたりのあえぎも
そりかえるあしの指も
暗いシーツのうえのあらわであるはざまも
彼は愛する、彼はそれをいとしいものとする
指がさぐるものはすでに形をかえ
指がくすぐるものは素晴らしい反応をする
君はすでに万物に反応する
月にも太陽にも星にも
雨にも雪にも静けさにも
彼の腕の内部というもの
彼の計画する愛撫というもの
必然的に愛が感覚へと変換されるところ
すべては彼の支配する内部である
くちづけさえも、おしつけられる愛情さえも
壊れていく、壊されていく
コワサレテ、ツクリカエラレル
夜のわずかな隙間から
快楽のわずかなしたたりから
君はおおくのまぼろし
それもこころから苦しくするまぼろし
涙を流してよろこび
涙をもとめて哀願する
それらはひとつのこらず、愛である
彼のまえにひざまづき
新たなる愛の痛みを乞う
君はそれからひらかれていく
どこまでも、ひらかれていく
それは行為としての
愛である。
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