ナゲキノカベ
その壁にそって人は並び
わたしたちの信仰と言うものも
ひどく曖昧なものとして
その壁に刻まれている
聖人の毛髪が石の奥に埋められている壁
わたし自身はその奥で暮らしているのだが
さまざまに形容される人生と言うもの
雨の中ではずぶぬれであるわたし
そして機械の眼差しが
ハルキウの北西部、地獄を模倣する辺りから
指を千切られて泣くこともない
心臓へ刺さる銅線の先が燃えている
メダマについては血の色をたしかめる
そして灰色の断面図
わたしはゴーリヤックの書に一本の線となる
限られた灰色はじつに愉快な
シンボルとなり、ページはすすんで理論を示す
破壊された街の壁という壁は
わたしの手で理解する、神よ
わたしの喉を締めつけて、神よ
おおきな影が街の上を飛行する
鉄分が不足している郊外の
ここはわたしの家があった場所です
やさしい穴が道にあいている
手も足も耳も記憶する樹々の道の
すこしばかりの肺の中にたまる
光と言う傾きのそれていく時間を、神よ
・・・うめきごえ・・・
壁はすでにおおくの眼をひらき
その奥にはひからびた人間の毛髪
生垣はふみつぶされている
わたしたちは童話の中にあらわれる
サンザシの実を求めるオオカミである
なげく理由もなく
涙するわけもない
ただ、この壁は灰色の石の奥
つめたい指の先
ナゲキノカベ。
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