ナス
いまからおれは
ナスのことを話す
乳白色のレジ袋の中
群れをなすナス
おれはナスに仇なす者
包丁の鈍い光
ナスのヘタ切り離す
輪切り
乱切り
半月切り
水にさらす
もはや神も仏も
ナスを見離す
醤油と
おろし生姜
酒
味醂
三温糖
夕方のキッチンで
おれはただ
なすべきことをなす
皿の上
盛り付けられた
艶やかなナス
どうだこの丁寧な仕事
最高のナスで
おれはおまえをもてなす
自信満々のおれを
おまえは軽くいなす
甘辛く柔らかなナスを
一口食べて微笑む
おまえはまるでビーナス
コメント
マイナスなことを言うと突き放す感じがして申し訳ナスですが、私はナスは食べられません。
@トノモトショウ さん
ぼくはナス好きだけど、嫌いな人の気持ちは何となくわかる。だって、あの色も食べ物としてはなんだか邪悪な感じがするし、生の状態で包丁を入れた時のあの感触もちょっと気持ち悪いしね。
私にとって子どもの時分に食べられなかったが大人になって好物になった食品の横綱が茄子です。妻もそうらしいので案外そういう人は多いのかも。子どもに不要で大人に有用な何らかの成分が含まれているに違いないと思っています。そろそろ嫁に食わすなと言われる季節ですね。ところでどうして英語でeggplantって言うのかなと疑問に思って検索したらなるほどと納得しました。
@たかぼ さん
たしかにぼくも子どもの頃は、あんまり好きではなかったような気が。茄子の味噌汁がよく出てきたんですが、あれが特に嫌でした。
それにしても、エッグプラントにそんな由来があったとは(←調べました)。単に「形が卵に似ている」だけだと思ってました。
私の勝手なイメージですが、「洗練」から「ユーモラス」に振った大覚アキラさんのこの詩もたいそう素敵ですね。なんか上手く言えんけど、こういうの大好物です。泉茄子の浅漬けや、煮浸しが食べたくなりました。
@あぶくも さん
ありがとうございます◎
煮浸し、いいですねえ。日本酒が飲みたくなりますね。
ナスに仇なすもの!!
最高です
このナスの詩から、人生の機微を感じます。
最終連の着地がハッピーエンドでうれしいです。
ちょっと検索してみたら、「ビーナス」って、「ローマ神話の菜園の女神のウェヌスの英語名」とのことですね。そして「のちにギリシアの女神アフロディテと同一視された」とのこと。その辺も含めて、このナスという詩に味わい深いものがあります。
@那津na2 さん
まさにその一言が、スーパーで買い物している時に頭に浮かび、
そこから発展していってできあがったのがこの詩です(笑)。
@こしごえ さん
実はハッピーエンドにしないのも考えたんです。
ナスを食べた「おまえ」が料理を「けなす」・・・みたいな方向で。
広がらなかったのでやめました(笑)。
しかし「菜園の女神」とは意外でした。
ボッティチェッリの絵画のせいでイメージ的に海ですよね。貝に乗ってるし。