メトシェラかく語りき
そこには誰もいなかった
いや、我々は存在していた
まだ、キリスト誕生の予感すらなかった
安易に抱擁を許さぬ体躯で立ち
猛り狂って天を刺す
決して朽ち果てることのない
その名に相応しい死を生き切る佇まい
太古の昔から太陽を燃やしてきたのは我々だ
我は樹木の王
森林限界を遥かに超えて
我が纏う樹脂は過酷な環境を物ともせず
虫一匹すらも寄せつけぬ
この地では百獣の王も生きてはゆけまい
ある男が我を観て「何だこれは」と言った
彼は我との邂逅で魂の対話をした
彼はニヤリと企んだ少年のような顔で
我と常に対峙し続けるのだと意を決し
我に永遠の生命を与え
心の裡に我を住まわせたのだ
コメント
まったく詳しくないので、これが聖書の一節の転用だと言われても納得するくらい。
@トノモトショウ
さん、ありがとうございます。
聖書の一節とは、なんと畏れ多い。この木のことをどうやって知ったのかも覚えてませんし、ネット写真程度しか知らなくて当然実物も見たこともないのですが、たいそうカッコいいので詩になってもらいました。
ちょっと検索してみたら、聖書と木のもそうですが、メトシェラ星という星があるみたいですね。
この詩はクールです。
メトシェラという名の木は存じませんでした。木の寿命は人間とは桁違いなので、樹齢を思うときはいつも、生命とは何なのかと深く考えさせられます。
@こしごえ
さん、ありがとうございます。
調べて頂いたのですね。星、木のいずれも長寿の意味から繋がりがあって旧約聖書から来ているようですね。何も知らないで木のインスピレーションだけで書いたものでした。面白いものですね。
@たかぼ
さん、ありがとうございます。
私は寧ろ木のことしか知りませんでした。確かに樹齢を考えると生命そのものの神秘を思わざるを得ないですよね。大きな木にはいつももたれたり抱きついたりする様にしています。