ハツのいのち
昨夜の味噌汁には
黒い目の海老と、刻んだねぎと
白いハツが入っており
骨を気にして喰(は)んでいたら
私の前歯の隙間から
か細い小骨が、一本とび出した
指でつまんで卓に置き
「糸島」という名の日本酒を
くいと、喉に流し込む
か細い骨が
在りし日に、海で泳いだ
銀色のいのちを支えたことを偲ぶ
私の腕に無数に生える
か細い毛たちも
わらわら
めらめら
ゆらゆら
今ここに、鼓動する
血液はからだを巡りゆく
頬杖ついてもの想う宵──
椀の底の黒い瞳が一瞬、光った
コメント
日常の食卓から生命を偲ぶ詩人の姿が浮かびました。海老は何を感じたんだろう。
あぶくもさん 日々感謝して、食べようと思います。 海老さんは「ハツだけじゃなく、わいのことも思ってクレヨ」とおっしゃっているようです。
ハツの味噌汁なんて食べたことないですが(なんだったら海老が入ってる味噌汁も…)、それを日本酒といただく食卓なんて粋だなあ。そしてそこからぐっと詩の世界に潜り込んで、ふと我に返る流れも可笑しくて、ほっこりしました。
まさにいのちを頂くということに思いを馳せた夕餉ということですね。日常の中でいのちのありがたみを忘れがちで、みそ汁の具の肴にその思いを乗せるのはなかなか難しいものです。この詩のように美味い酒の力を借りればできるかも。
命を頂いてばかりの私たちもいつか物質になって何かを形成する要素になることを思います。ハツたちもめぐってやってきたのかしら。
味わい深い詩です。
食卓の様子が素敵です!
ふだんの食事ではあまり意識しない命と食のつながりをストレートに感じます。
全体に漂う静かで厳かな雰囲気も好きです。
トノモトショウさん
ありがとうございます。 ハツも海老も出汁になっておいしい味噌汁でした。
日常の中で、時々ほっこりしたいですね☺
たかぼさん
酒を飲み、いただきます、の意味思う☺
たちまこさん
ハツとの一期一会を、書きました☺
大葉もみじさん
この詩を味わい、汲んでいただき、ありがとうございます☺