昔の音
スマホのやり過ぎで
疲れ、腹も減り
近所の和菓子屋へ
おむすびを買いにいった
店の奥に主人の大きな背中が見え
古い機械が
ぎったん、ばったん、餅をつき
合い間に主人が、手でこねる
――あれ、いいですね
――ええ・・・旧式なもので
初老の奥さんは
小声で言った
(辺りの空気は昭和であった)
「お茶乃友」と印刷された
紙袋に包まれた
おむすびの温度を、手に
歩き出す
電波にまみれた僕の脳裏に
ぎったん、ばったん
餅をつく音が
いつまでも繰り返されている
コメント
お店の雰囲気や空気感がすてきに伝わって来る詩ですね。
初老の奥さんが小声で言うのも、短い言葉なんだけど その方のお人柄を感じさせる。
おむすびの温度などもいい味。
2連と最終連が呼応して最終連の着地がすてき。
「おにぎり」ではなく「おむすび」がこの詩には合ってることを読みながら実感しますね。私の家の近くにも、古くから続くお団子屋さんやお煎餅屋さんがあり、この詩を通じて、そういうお店の中の空気感まで伝わりました。
何かを頭の中で反芻して
日常を生きて
おむすびをたべる
そのトランス状態は最高です
こしごえさん
ありがとうございます。 昭和感が伝わり、嬉しいです。
あぶくもさん
ありがとうございます。 こういうお店は残ってほしいと、願います。
那津na2さん
ありがとうございます。 アナログ感覚を保ちながら、日々をあゆみたいです。