風景の中の関係
迷いの領域が解けていく
構わず街の輪郭に消える
形にすらならない苛立ち
湧き上がる幻影だろうか
舗道の行方が曖昧になる
その向こうに広がる彷徨
一人でいることに馴染む
または客観として捉える
確かな表情を弄るために
肌の触感をなぞるために
無数の映像となるために
日々は再び沈殿していく
重みをぼかしていくのだ
風景は心象の分だけ潤む
対峙すれば煽られていく
距離を置き記憶を重ねる
意識の底に濾されていく
生々しい無意識を眺める
雑踏は仄かな色彩に滲む
大気そのものに転調する
リズムを意図的に絡める
誰かの心象を丁寧に包む
時間は断片的な個の集積
諦める瞬間の濃い微笑だ
もう両の目を失っている。
コメント
はっきりと対峙するものを、詩の中に持ち込む時、世界を交点とする、世界を斜線とする、矛盾するものは、自己の影である。まるで無意識のアンバランス。直接の視界である。
定型文字数のやつ、来ましたね。
「風景は心象の分だけ潤む
対峙すれば煽られていく
距離を置き記憶を重ねる
意識の底に濾されていく
生々しい無意識を眺める」
ここ、好きだなぁ。あと、最終行が不穏なようでいて、静かに目を閉じて心を開いているのか、あるいは破顔大笑ともとれるようなところが味わい深いです。
長谷川さんの羅列詩(とオレは呼んでいます)は新鮮。どうしても冷静な視線になってしまうものですけど、ちゃんと叙情もあるのは流石です。
居る場所が限りなく液体だったとして、振ってみると沈殿物は表情を変えてまた沈殿を繰り返し、そこに何を見出すかの多様性も認識します。目を失っても皮膚から見い出したい。
揺さぶりを感じました。
@坂本達雄
坂本さん、時々、定型の中に自らを無理に押し込んで書いてみます。そうすることで、浮き出てくるものがあるのですね。坂本さんがご指摘くださった事柄は、まさに浮き出てきた部分です。「世界を斜線とする」「無意識のアンバランス」。…よくわかります。まさに、アンバランス。
@あぶくも
あぶくもさん、ありがとうございます。時々、四角い?定型詩を書きたくなるのです。起承転結をとくに定めてはいませんので、お好きな部分を切り取って、想像していただけると、作者としては嬉しいです。最終行だけは、ちょっと意識しました。
@トノモトショウ
トノモトさん、羅列詩、なるほど。たしかにそうかもです。自分の詩の根っこは、叙情だと思います。定型詩を書く時は、なるだけ叙情を削って書こうと思っているのですが、…やはりバレてしまうのかな。
@たちばなまこと
たちばなさん、丁寧に読んでくださり、嬉しいです。最終行は、意識して書いてみました。「目を失っても皮膚から見い出したい」、このご指摘に、なるほどと思ってしまいました。
圧倒的な客観視。自分ですら遠景になってしまう瞬間。
長谷川さんはひとり歩きの天才だな、と思いました。
あっ、のんべいの天才でもありましたね(笑)
@nonya
nonyaさん、風景の中に自分を溶け込ませて(解け込ませて)いけたなら、本望です。遠景も理想です。が、まだそこまでの境地には辿り着いていません。修行?を続けていきます。…お酒飲みながら、ですね。