作者

誰もが驚くような
そんなものを作りたい
そうやって作られた
一つの作品
名前は無い
ただ驚かすだけの作品

作者は大いに完成を喜んだ
これで沢山の人が驚いてくれると
驚いて楽しくなってくれるだろうと

だが作品は嫌われた
作者もいっしょに嫌われた
驚かすだけの作品だったから
それゆえ人はその作品を嫌った
「驚く」ばかりで疲れてしまったから

作者は考えた
次の作品は誰もが楽しめるような
そんなものを作ろう
そうやって作られた
新しい作品
名前は無い
楽しませるだけの作品だった

作者は完成を大いに喜んだ
これでまた人が楽しんでくれるだろうと
楽しんで笑ってくれるだろうと

だがその作品はすぐに飽きられた
作者も同じように飽きられた
ただ楽しめるだけの作品だった
だから人々は飽きてしまった
「楽しい」だけで刺激的なものが何もなかったから

作者はまた考えた
次はどんな作品を作ろう
刺激的で楽しくて笑っていられるもの
嫌われなくて飽きられなくて幸せなもの

どうにも浮かばなくて人々に聞いてみた
すると返ってきた言葉は意外なものだった

「あなたが作品を作っているときが，一番刺激的で楽しくて笑っていられます」
「君が物づくりしているときが，何より幸せそうで素敵なんだよ」

作者は大いに驚いた
まさか自分自身がその作品だったとは
作者はいつものように作品を作る
作品を作ることで皆が喜んでいることを知ったから
作者は笑いながら物を作る
周りの人々が笑ってくれているから