悪路王
諸国をめぐりて渇きあり、すなわち
悪路王が愛馬で渡る荒れ野
砂漠の砂が風に飛び
悪事を隠す砂塵はあたり一面に飛び
脳内の呪文は削られて、かすれゆく
諸々の歴史は石板の幽霊にすぎない
太陽はザウルを示さない、風もまた
フンコロガシもアモルファスも
死んだ蛇も
死者がまたがるクロサイも
喉が渇く
喉の奥がひっついて
しゃべれない
その悪事は美麗であることを知れ
そしてまた大いなる記章であることを
悪路王は諸国の悪政なることを嘉する
己死なずんば、人々の苦しみなど
屁とも思わず
彼は道なき道を疾駆する
お天道様よ、隠れたければ隠れよ、汝に居場所はなし
闇ならば闇のくらしあり
ラバラバと、バーラバと、バビルズー、ブーズーズ、ブーブーズ
なんとなれば世は悪事の世なり
幸福を味わい尽くさんと欲せば
砂漠の砂のくずれても
なお砂丘にはこの道あり
悪路王は駆けるのみ
強靭の轡あり、強靭の鞍あり、強靭の肉あり
渇きに渇きて汗のみしみて
女をかつぎあげて、女の乳房をつかみ
そのほとをまさぐるは
悪路王の日々の楽しみ
愛馬は黒し、闇のごとく黒し
あきた女どもは砂塵の中に捨て去れば良し
そして日々の呪文は星明りにも語られず
石板に穿つべき愛隣はよもやなし
砂丘の向こうに日月も見えず
魂の乾坤であるばかり、わが魔羅もまたさらに
いつしか丘陵にわが宝玉の城を築かん
真水の水浴場を椰子にて囲み
肌白き娘たちをはべらせ
天国の甘き料理の皿を広々と並べてみん
悪路王には白刃の剣あり
これはこれ我を褒めたたえぬ男の首を
今断たんとする時の来たり
切って捨てる。
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