ゴール裏から

 詩を書くひとは
 「太陽系の外へさえも行ける」と

 彼は知っていたのか
 ゴールマウスはるか上を
 高く超えていくシュートを
 サッカーびとが
 宇宙開発、と呼ぶのを

 スタジアムゲートをくぐれば
 さあ、ぼくは走り出せ
 そのまま
 まっすぐな熱狂に飛び込んだなら
 いつまでもたっても慣れない
 悔いや痛みを
 嗄れていく声に乗せて
 こっそりと
 もう
 会えない人や会わない人の名を
 叫んでみたりなどして
 
 試合終了間際の
 ループシュートは
 やわらかな孤を描いて
 ため息の中を遠く、高く
 もしかしたら銀河系まで飛び去ってしまって

 きっとぼくひとり笑っているんだ

  (一連目二行目・川崎洋「サッカー」より)

投稿者

兵庫県

コメント

  1. スピード感があっていいですね。

  2. @坂本達雄
     坂本達雄さん。ありがとうございます。実際に2003年から2010年くらいの間、実際にセレッソ大阪のゴール裏に陣取り、声を出して懸命に応援していたことがあります。もうスタジアムに行くことは可能でなくなってしまいましたが、今でもセレッソを応援しています。
    今後ともよろしくお願いいたします。

  3. @平瀬たかのり
    わたしはテレビでの観戦ばかりですが、大阪の出身でもありますので、関西のチームは好きです。応援はいつも自分への応援でもあります。ガンバレ自分!

  4. 再読すると、じんわり味があっていいですね。サッカースタジアムには行ったことありません、私は大相撲ファンですので。それでも、テレビ観戦と違うライブ感覚がスタジアムにあるのだろうなぁ!
    と、想像できてシャープな作品だと思いました。

  5. @リリーさん
     コメントありがとうございます。ゴールが決まった瞬間、勝利が決まった瞬間、前の、横の、後ろの、本当に見も知らない初めて会った人たちと、満面の笑顔でハイタッチをするのです。そこに何の垣根もありません。ただ好きなチームの歓喜を共にするのです。それはとても素晴らしい瞬間なのです。
     
     リリーさんはさんは大相撲なのですね。作品拝読し、ドラマ性と描写力に長けた詩人さんだなあと思っております。
     いつか相撲や、力士の作品を読んでみたいなと思いました。

  6. 前向きな力と
    独特な優しさを感じました

    会えない人や、会わない人の名をスタジアムで叫ぶかぁ
    素敵な、シーンです

  7. @那津na2さん
     ありがとうございます。
     「前向きな力」そうですね。特に試合前のゴール裏席は、それに満ち溢れています。
     永らく観戦には行っていません。これからも難しいかもしれません。
     でもあのまっすぐな熱気、ゴールが決まったときの熱狂は、忘れることがありません。
     いつかまた、あの中に我が身を置きたいです。

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