弥生湯
暖簾のむこうに彼がいて
いつも私を待っててくれた
あの頃
石鹸の匂いするあなた
寄り添って
絡める腕のまだ熱る
そうやって
歩いた夜道の風を覚えてる
洗い髪な私がまっすぐ帰るのを嫌がると
あなたは下宿の近所を一回り
あの道灯りを覚えてる
ワンディーケイな部屋に帰った
あなたはいつも
冷えた缶ビールを飲んでいた
私は何を飲んだかしら?
それは覚えていないけど
暖簾の向こうに居てくれた
あなたが買ってくれたフルーツ牛乳
飲み干した時の
うれしさだったら覚えてる
そんな夏の、
過ぎていつからか私が行かなくなった彼の部屋
そして或る日あなたは教えてくれた
「あの銭湯が、無くなったよ。」
胸の奥で
おうむ返ししたあなたの言葉 今も覚えてる
コメント
銭湯大好きなので、好きな人と一緒に銭湯♨️通いするみたいな思い出、私もほしかったなぁ〜。思い出風景というものは誰と行ったかがセットなので、どんどんなくなっていく銭湯の切なさも合わさって尚切ないですね。
@あぶくも 様へ
お読みくださり、ご感想いただきましてどうもありがとうございます!(*´∇`*)
京都、西大路通の三条辺りに在りました銭湯をモチーフにして書きました。甘くて
切ない思い出です。私も銭湯♨️や温泉、大好きデス。
銭湯、最近は見かけなくなりました。夏の宵でしょうか。情緒と、艶っぽさ、郷愁感がありますね。弥生湯という名もいいです。
@長谷川 忍 様へ
お読みくださって、ご感想のコメントをいただきましてどうもありがとうございました。この作品は実話を元に、かぐや姫の「神田川」を逆バージョンでイメージして書きました。いろんな歌手のカヴァーも聴きました。推敲で内容はかなり削ぎ落としまして。
脱稿した時の喜びは大きかったです。(*^^*)詩を、自分は書きたいのだな…と実感した作品です。