I GOT YOU
オスは血のつながっていない仔を殺す
野生ではしばしば見られる
多くの動物で観察される
おれの場合は殺したりはしなかったが、
子をどれだけ愛せたかは測りようがない
おれの遺伝的な子孫である子供を育てていないからだ
子が高校を卒業したのを機に
おれは自分と妻の遺伝的な子を取り戻そうと決断した
おれは自分のこの行動を愛だと証明しようと思う
病院では
赤ん坊をたまに取り違えるように
おれは看護師に指示を出していた
そっと、
気づかれないように
そっと、だ
これは民主主義社会では重要な作業だ
民主主義社会に生存する人間は
何者になるかは個性ではなく、環境によって決まる
遺伝的要因はなるべく平準化しなければならない
つまり、シャッフルする必要がある
昔、なにかもっと上の方から要請された医師会が
いくつかの病院で試験的に導入したものらしい
ちょうどその頃、おれは自分の子を取り違えるように指示した
おれも若く、他の親に後ろめたい思いがあったからだ
これはじつはもうずいぶん前から、すこしずつ
増やされている、という
個人崇拝を歴史上から廃絶するためだ
我々は何者でもあり得た
ゆえに何者でもあり得ない
票の重みに血統の違いがあってはならない
分散は固定されてはならない
おれの子は大学に入学してきた
おれは入試の面接を偶然担当して、直観した
入学式におれの子はいた
おれは取り戻そうと考えた
愛していると伝えるのだ
数年後にはおれはおまえの指導教官となる
おれがおまえの父だ
おれはおまえの父になるだろう
コメント
なるほど。
野生のオスが自分の血統でない仔を殺すのは生き残った強い自分を守るため、弱肉強食、弱いものを滅ぼして強いものが生き残ることでひいては種全体が繁栄するための本能でしょう。しかし高度に社会化され、理性と知性を持ったヒトにはもうそのような本能は必要ないはず。しかし自分の遺伝子を継承した者に権力や財産を残そうと死に物狂いになるのは北朝鮮などの例を挙げるまでもなく日常茶飯事です。その一方で、愛が遺伝しないことも、家族間のいざこざや果ては殺人事件を挙げるまでもなく明らかです。「その薔薇が世界中に数え切れないほど咲いている薔薇の中の一つではなく、あなただけの特別なただ一つの薔薇になった(星の王子様より)」のがなぜなのかは、ペットを飼ってそのペットを家族の一員として愛するようになった経験のある人には自明でしょう。
そういったことに対する大いなる挑戦としての実験であり、詩であります。
ああ、これは面白いなあ。面白いという感想が適しているのかはわからないけれど、ゼッケンさんの才能迸る物語性豊かな詩はフォーカスの当て方も含めてやはり面白い。小説にでも映画にでもなりそうな。
@たかぼ
>ペットを家族の一員として愛するようになった
人の心って不思議ですよね、自分の思ってもいないふうに動くし、変わっていくし。ものごころついてから死ぬまで楽しめる、こんなにうれしいことはない、ゼッケンです。たかぼさん、いつも気づきのあるコメントありがとうございます。一方で、心と言えばだれも批評できない、なぜなら、誰も心を理解してないから、ていう便利さがあって、詩を読んだり書いたりする際には、究極的には心だけど、取り扱い注意ではある。
例えば、ChatGPTに「現代詩を書いてください」と投げると、以下、
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「時の流れ」
春はまだ遠く 冬が過ぎ去り
夏の熱さも忘れた頃
秋が過ぎ去り 再び冬が来る
時の流れは終わりなき旅
いつかは誰もが逝く先へ
今を生きることは限りある
だからこそ今を大切に生きよう
時の流れは激しく
刻々と過ぎ去っていく
それでも私たちは生きていく
時を超えて 記憶となって
今を生きる私たちにできること
愛を与えること そして受け取ること
心の奥深くに刻まれた
思い出を大切にしよう
時の流れは終わりなき旅
いつかは誰もが逝く先へ
今を生きることは限りある
だからこそ今を大切に生きよう
~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上、AIが書いてくれました。記号のつながりを学習したAIの返答って平均値だと理解しているんですが、つまり、これが世間一般が認識している現代詩なんだろうな、と。
現代詩、なめられてますよ。
@あぶくも
>ゼッケンさんの才能迸る物語性豊かな詩
くぅ~っ、喜悦。もっと言って。ゼッケンです。あぶくもさん、こんにちは。
>小説にでも映画にでもなりそうな。
そう。だが、昔、ブンゴクで言われたのはゼッケンさんの作品って結局、上位互換がある、って。
良くも悪くも予告編。本編があるんじゃないかっていう期待感は書いてる私自身が依存症になってる。
どちらさまか、小説にするなり映像にするなりして儲けて欲しい。そして、すこしでいいから分けてくんないかな。
@ゼッケン
さん。AI上手いな~。「現代詩」だとは思わないけど、いわゆる上手な詩だと思う。いかんいかん。この程度の詩を上手いなどと思うと簡単にAIに駆逐されてしまう。でもゼッケンさんの書いた詩もAIは学習してしまうので、近々もっと上手い「現代詩」をAIによって書かれてしまうのでしょう。いたちごっこだな。
@たかぼ
AIより上手な詩が書きたい! ゼッケンです。いや、それは置いといて、たかぼさんが指摘したこれ、
>「現代詩」だとは思わないけど、いわゆる上手な詩だと思う。
ここです。私は「現代詩」をAIにオーダーしたんです。そうしたら、上手な詩が返ってきたんです。AIがそう思ってるってことは、世間は上手な詩と現代詩の区別がついてない! なんか上手いこと言うのが現代詩だと思ってる。え、そうじゃないの? って自分でもちょっと思ったりもするが、たかぼさんもこれは「現代詩」じゃないと実際直観したわけだし、やっぱり違うんだと思う。共感だけじゃ現代詩にならんっちゅうこっちゃで。差異化の感覚があってこそ。
>近々もっと上手い「現代詩」をAIによって書かれてしまうのでしょう。いたちごっこだな。
このいたちごっこを共進化と呼びたい。将棋みたいに詩もAIと共進化したらええです。AIが出してくる最適解を参考にすれば自分の陳腐さをいやというほど嚙み締められます。
なるほど!と思うのですが怖いなぁ。
読み手の想像が膨らみまくる面白い詩です。
@たちばなまこと
わあ、ごめんなさい、返事してなかった。たちばなさん、こんにちは。ゼッケンです。
>なるほど!と思うのですが怖いなぁ。
相変わらず鋭い。サイコホラー風に偏執の怖さを描いてますよ。血がつながってるとかつながってないとか言うときの解消不能な感覚に対する否定も執着も両方極端な感じです。