即興/春、連綿
さえぎられた日差しからこぼれ出てくるのはなんだろうか
どこかへとつながっているような気がして振り向いた
褪せた花の一群が葉脈をうすく晒してちらばっていた
もうすぐ枯れてしまう
死んでしまうのか
ほそい糸みたいであまりに頼りない
色素をどんどん失っていくのだから
やがて真っ白になるはずなのに
どちらかといえば黒ずんでいくのはなぜだろう
死んでしまうからか
弔われることがあるとすれば
どこかへとまた始まれるのだろうか
つながっているような気がして空をみた
雲の切れ目からはほそく光の帯
照らすでもなく寄り添うでもなく
光はただそこにぼんやりと伸びていた
根をのばすみたいな
枝分かれしていくような
何かを吸い出すように
ただそこに伸びていた
つむぎ合うことの喜びだとか
なけなしの幸せを奪い合ったり
吸い取られていく
死んでしまうのだろう
もうすぐ
死んでしまうのだろう
花はくしゃくしゃに褪せてしまった
もうだれも元の色を覚えていないから
どこかへ旅立って新しい色を探せるといい
空から光が伸びている
吸い出されてゆけよ
新しく生まれることができたなら
今度こそ色褪せることがないように
コメント
そのイメージで、空から伸びてくる光が植物の根っこのように見えました。そして吸い込まれていく。そうだ、僕たちはこの地球の養分なんだ。と。
@たかぼ
さん
コメントありがとうございます。
そうですね。ぼくたちは世界の養分なんだと思っています。
いつか吸われるのでしょう。
「雲の切れ目からはほそく光の帯」
ここに召されていく生命体の連なりがイメージできました。その春は、生死が爛漫であり連綿でもあるんですよね。
@あぶくもさん
生死が曖昧なのが春の魅力でもあり、ゾクってするところでもあります。
桜の木の下には死体が埋まっているらしいし。
この詩を拝読して、その情景の数々を美しいと感じました。美しいです。
希望だと思える言葉が所々に見られると感じますが、特に最終連がある種の希望だと感じます。
@こしごえさん
返信遅れました。ごめんなさい。
新しく希望に満ちている一方で、振り落とされるみたいに失われていくもの。
春になるといつも思います。
弔いの季節だなあ、と。