未詩・ちいさな弔意
ちいさく溝を掘って
きのうまで咲いていた黄色い花を埋葬する
名前を考えているうちに
いつのまにか旅立ってしまった
知らないうちに
抜け殻みたいに影だけが残った
通り抜けていったものは
空に上がっていったのか
地層の奥へ沈んだのか
どっちなのか
いや、どちらでもないのか
ともかく抜け殻を土に埋めた
褪せて萎んで軽い切れ端を埋めた
葬ったつもり
見送ったつもりで
ほんとうはいつもと変わらない景色に
新しい色を増やしたかったから
ただ埋めてしまいたかった
いなくなってほしかった
古い亡骸だなんて呼ばれる前に
夜中には雨がくるから
墓標もない
みんないつか流れてしまうんだから
泣き疲れた子どもが
涙を拭かないまま眠ってしまうような
縛られているのに気づかないまま
ちいさく身体をふるわすような
後には何も残らない
残せるはずもない
はじめから何もなかった場所に
何かあったと思いたいだけだ
黄色い花は本当に咲いていたよ
どこにでもあるようなちいさな花
数えたらきりがない
思い出だけふくらませても苦しいだけだと
誰かが言ったような気がした
コメント
子供がお墓をつくったり埋葬したりする、ごっこ遊びのような、無垢なものがいつの間にか、消えていくような、寂寥感がありました。
哀しい光景、想いですが、最終連で気持ちが少し柔らかくなりました。黄色い花は本当に咲いていたよ。憶えていてくれる人がいて、命は続いていくのだな、と。