いつか還る

無限遠に目を細めれば
縮尺の都合上
ちいさな羽虫の亡骸も
ぼくのこの身体も
だいたい同じくらいの大きさです

土に還るための段階は
どうにも煩わしいから
いくつか端折ってみる
飛ばない虫を真似てみる

だんだん水分が抜けていき
何も感じなくなるんだろう

目を閉じると浮かんでくる
全てのものがほんとうだったらいいのに
自分を嘘つきと呼ぶのはちょっとした快楽だ

涼しげな風
弱まった太陽
死んでいく
みんな死んでいく
声を出さずに
おとなしく列にならぶ

余白

白夜の海をさびしく進む戦列艦
一つところの記憶には残らないだろう
無人のまま進む
ときどきちいさな魚につつかれて
少しずつ浸水する
栄光なき英雄

投稿者

東京都

コメント

  1. コメント失礼いたします。

    くるくると、まわるような何かを感じます。

  2. @ぺけねこさん
    コメントありがとうございます
    なんとなく、輪廻のイメージで書いてます。

  3. こんにちは。
    はじめまして。
    とても穏やかで、眼差しが
    わたしが歴史的現在にものいえば
    あざけるあざける

    そのような感覚を感じました
    中盤から後半、最後の一連は
    違う感じです
    右足を一歩踏み出そうと
    失礼致しました
    この詩好きでしたから。

    余白もとても

  4. 「自分を嘘つきと呼ぶのはちょっとした快楽だ」というシニカルさが、返って寂しさや諦観を際立たせていて、印象的でした。佳い詩だと思います。

  5. @wc.
    ありがとうございます。
    好きだと言っていただけて嬉しいです☺️

  6. @渡 ひろこ さん
    コメントありがとうございます
    気に入っていただけたなら何より!

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