何
何かを書こうとして
何枚も何枚も紙を塗りつぶした
ざわざわと渦巻く感情を
雑多な崩れかけた字で
何かを捕まえようとして
何でも何でも追いかけた
しとしとと降る雨の中も
薄汚れたこの体で
何かを見つけようとして
何回も何回も研究をした
ゆらゆらと揺れる頭と
山のような残骸を背に
何かを乗り越えようとして
何度も何度もよじ登った
壊れかけた精神と
崩れていく私を感じて
何をしたいのかを
それを探さないといけなかったのか
そして探し疲れるのだろう
何もない私を嘆いて
コメント
「何」に関する各連の詩の強度がおもしろく連なっていると感じます。
そして、最終連での結びが効いていると思います。何もない私を嘆いて という最終行の 何もない私 というところに注目すると とびぬけた感じを受けますが、それで嘆くというのがこの詩の「何」という題と共鳴して、この詩のもの悲しさを出していると感じます。それは すてきなもの悲しさだと思います。