扉の傷
踵が靴ずれるパンプス
足先も痛くって とぼとぼ帰る
裸足の心
向かう先が別れた彼氏の下宿先だった
大通りを横道へ入ると
何軒か連なる先に大きな一戸建てのハウスがあって
玄関扉はいつだって閉まっていなかった
共用廊下を上がってすぐの左ドアが
不用心でいつも
鍵を掛けずに居た呑気な彼のワンルーム
今夜はドアに
カギの掛かっているような気がして
木の扉を眺めるだけだった
ノックしてみる勇気も無くて
ドアノブに
手をかけてみることも出来ないでいた
彼はもう眠っている筈だった
時は すでに
もう遅くて
溢れ出る涙 止まらなくなった
ちょうどドアノブの傍に
硬い物で擦れて出来た様な
まだ新しいと思える傷、
木の表面を短く横筋になって削っていた
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