はる

 四年京都に住んで
 今でもよかったと思うのは
 はる を覚えたことだ
 生まれ在所に戻ってからも遣っている

 編んではる生きてはる植えてはる選んではる起きてはる
 書いてはる切ってはるくたびれてはる蹴ってはる困ってはる
 さすってはる死んではる住んではる急いてはる供えてはる
 立ってはる千切ってはる積んではる手招いてはる飛んではる
 泣いてはる握ってはる抜いてはる寝てはる乗ってはる
 走ってはる弾いてはる踏んではる減らしてはる惚れてはる
 待ってはる見てはる剥いてはるめげてはる揉んではる
 妬いてはる結ってはる酔うてはる
 ラリってはるリードしてはるルンルンしてはる礼言うてはるロマンポルノ見
  てはる
 わくわくしてはる

 贈って重宝、遣って便利
 つまりは現金みたいな語尾を
 手に入れたわけなのだ
 誰もお釣りをくれないけれど

 それから
 足しげく大阪にも通ったぼくは
 豚バラ肉を溶き卵でくるんで
 じゅうじゅう焼いてソース塗って食べる
 とんぺい焼きも知った

 十九歳のぼくはきっと
 感動していたのだ
 谷町六丁目空掘商店街入口の
 お好み焼屋「DAN」のおばちゃんが
 鉄板上の豚バラ肉を
 コテ翻し次々と
 ひっくり返していかはる
 その美しい手さばきに

投稿者

兵庫県

コメント

  1. こんにちは。この詩の感想を一言でいうとしたら何かな、と思ってすぐに頭に浮かんだのは、「美しい」。おばちゃんの手さばきを見て、美しいと感動している十九歳の、きみ、が美しい。誰にでもきっとある、もしくはあった、その尊い瞬間が美しい。ありがとうございました。

  2. @たけだたもつ様
     お読みいただき、望外の感想までいただき、感激いたしております。
     その日までボクは「とんぺい焼き」って料理を知らなかったのです。さて、どんな料理なのかと興味深く見守っていたこと、そしてその美味しかったこと! はっきりと思いだせます。
     これまで生きてきた中で、なぜか覚えているふっとした瞬間、そんなことをいずれまた書いてみようかなと、思っています。
     こちらこそ、ありがとうございました。

  3. こんにちは。私も、拝読させていただきまして。作品とそして、
    コメントでのお二人の対話に、感動致しました。どうも有難う
    御座います!

    蛇足ですが…。私も学生時代に大阪在住の友人から初めて、
    「ほな、な。」と、手を振られて。「ほな。」て、…。?
    じゃあ、またね!の、関西弁? だと知りまして。
    やがて彼女と話す会話が、「ほな、どうするの?」
    「ほな、こうしよか。」「ほなら、そうなんちゃうん!」
    便利な表現になりました。^^;
    知らなかった時の自分よりも、面白くなれた様な言葉との
    出会いでした。
    ふと、思い出してお伝えしてしまった…独り言の様な戯れで、
    どうも失礼を(⌒-⌒; )汗 致しました。m(_ _)m

  4. @リリー様。
    コメントありがとうございます。
    新しい言葉に出会ったとき、それが相手が、ふだんつかう言葉だったりしたときはドキッとしますね。
    ボクの在所では,壊れることを「めげる」と言います。作品と同じく19のとき、高校時代の同級生で集まる機会があり「めげる」が通じないことで盛り上がりました。なぜかそんなことを思いだしてしまいました^^;。

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