食卓に朝を置く人
未だ血圧の上がりきらない朝
乳白色の靄がかかった意識の西側から
コーヒーの香りが流れ込んでくる
オールを失くしたボートさながら
廊下をゆうらりと彷徨いながら
食卓のほとりに流れ着く
ベーコンエッグ
バタートースト
少し苦めのマーマレード
さりげなく置かれた一輪挿しの小花が
食卓に彩りと季節を装わせている
誰も見ていないTVが
ぬるぬると垂れ流すのは
相変わらず人と街が傷つけられたNEWS
その向こう岸から聞こえてくる
食器の触れ合う音がボサノバだから
今日のあなたは上機嫌
あなたが食卓に朝を置くから
今日の香りと彩りと音が始まる
あなたが食卓に朝を置くから
私は取り逃がした私を取り戻すことができる
コトンと置かれた
コーヒーカップに向かって
出来る限り単調に「ありがとう」と言った
コメント
この詩の話者の食卓の様子がすてきです。(ただし、個人的に、大河ドラマ以外のテレビは全て嫌いだし、ニュースやワイドショーなどは大嫌いですが。)
夜間ではなく、昼間活動をする人にとって朝はある意味特別な時間帯なのではないでしょうか。
あなたが食卓に朝を置くから という詩の言葉に希望を感じます。
そして、最終連、
コトンと置かれた
コーヒーカップに向かって
出来る限り単調に「ありがとう」と言った
というのが特に好きです。コーヒーカップをテーブルに コトン と置いた音も大好き。実際に、私もコーヒーカップを愛用していて、自室のちゃぶ台に コトン とカップを置いた音が好きです。静けさの中でのこの音が特に好きですね。
この詩では、さりげない「ありがとう」が生きていますね。
@こしごえ さん
>コメントありがとうございます
日々の当り前を噛みしめながら書きました(笑)
朝の食卓の雰囲気が幼い頃から好きでした
コーヒーの香り、味噌汁の匂い
目覚め切らない思考と慌ただしさ
朝を用意してくれる人には感謝しかありません。
(というのは内緒ですw)