なぁんて思い出があったら
水金地火木土天海冥
そのすべてが一直線に並ぶという
惑星直列というとても珍しい現象です
今夜、外に出て空を見上げてみましょう
先生が言ったとおりにしたボクだったが
首が痛くなるばっかりで
土星の輪っかも木星の目ん玉も火星人も
見えるわけでなく
しょうもなぁ、はよ帰ろ
ローリングソバットで四分の一回転したら
女の子がひとり夜空を見ていた
目が合うと彼女は
ドギマギしているボクを見てすこし笑って
すっと伸ばしたしなやかな腕の先
指さしたサーカスのテント
休憩時間に抜け出してきたの 本当はいけないんだけど
ボクはスパンコールの彼女にドギマギしっぱなしで
タイガーマスク、好きなんだね
え
ほら、さっきのローリングソバットじゃん
え、うん
いつもやってるの?
あ、うん、学校で流行ってる
そうなんだ ねえ、見てて
クルリッ!
蹴り足まっすぐ伸びきってちゃーんと一回転
ボク、口あんぐり
へへへ、わたしも好きなんだタイガーマスク
四次元殺法、かっこいいよね
そうして指さす夜空の先
ほら見てあれが金星よ
ああ、うん、そう、へえ、なんて言いながら
そのときいちばん明るく光っていた星を見ていた
本当は彼女をずっと見ていたかったのだけど
なぁんて思い出を一つ持っていたなら
ぼくはどんなこれまでを過ごしてきただろうなぁ
なんにも変わってないかなぁ
コメント
創作にしても何度も思い続ければやがて本当の思い出になりそうな素敵な思い出ですね。
@たかぼ様
ありがとうございます。
かの寺山修司の言葉に確か「実際に起こらなかったことも歴史のうちである」と云うのがあったと記憶しています。そんな「起こらなかった過去」を求めているから、ボクはこうして創作を続けているのかもしれません。
シナリオのコンクールには、これからもずっと挑み続けようと思っています。