モノクロ
かたんかたん
朝もやを抜け出し静かな旅立ちだった
僕らは向かい合わせに座り
窓の外を見ていた
流れるモノクロの風景が
やがて赤やオレンジや濃紺の屋根になり
喧騒とともに起き上がる
表情も読めない人々が
すごい勢いで後ろへ飛んでいく
かんかんかんかん
僕らは揺られるのにも飽きてきて
ケンカをはじめる
小さいケンカだ
だけど口に出る過去が
お互いの命を縮めることを知っている
教科書にも載らない
悲しい歴史だ
雨雲がみるみる間に
この窓から見える世界の全てを覆っていく
”太陽さえも存在しない世界”
そんなことを言ったら
また君は悲しむだろうか
君は雨粒に流されるだろうか
モノクロに回帰していく
ぱらぱらぱらぱら
とうとう降り出した
風も窓を叩き出した
夜までには激しい嵐になるだろう
君は外を見て黙っている
怯えたような目で
息さえも潜めている
かたんかたん
もう戻らない
飛び去っていく風景
モノクロからモノクロでもかまわない
僕らは今日を捨てるんだ
「向こうは晴れているかしら」
「向こうは晴れているだろう」
コメント
ケンカ。
今ならもっと上手く立ち回れたかもしれない。
傷つけなかったかもしれない。
そんな過去なんかがいくつかありまして、思い出したり、向うを想像したりしました。
教科書にも載らない
悲しい歴史を内包して
人々は生きている
その事実を主観的にモノクロームに表すことで、全ての人々の気持ちを代弁しているかのよう
自らの事のように入り込みました
素晴らしい詩です
作者の名前も良いです