夕空
ひきわり納豆が好きですとあなたは言う
古代米の赤い色が、これも好きですと言う
映画のアイデアを生み出した、円筒形の馬の回転図
それを自分の手で回しながら
「パカパカ」と口に出して言うと
本当に馬が走っているように見える
どのような精神世界の豊かさとアルコールランプ
本所町の小学校の校庭には放されたニワトリがかける
キスミープリーズ、キスミー
嫌われているわたしの精神の統一体
影法師と影の認識主体、そのようなものです
ジャリに混ざった金平糖はなんだか
もう拾い集めることもできない、みたされた教育
ジャポニズムの悪い影響ですねと、彼が言う
諸君の多くは海水から重金属を分離して
やがて登場する精密機械を人間原理で語れると言う
とにかくスメタナはタルポット、深いブルーの
そのせいで、わたしはつねなるものを見失うのだ
古都の静寂とふるびた人間の脳髄のかけら
そこから半身をのりだして
夾竹桃の花盛りの森へと
けだるく、もしくはためらわずに、ハコベ
パイナップルの舟、個人の舟である
ライゼンタールのトートバッグと言うのが
はやりだと君は言うのか
バナナの舟、これももちろん個人の舟である
かすかに海の匂いがしている
このあたりの潮位はどれくらいあるのか?
腰のあたりまで毎日潮が上がって来るのだと言う
その言葉と女の腰のあたりが
なんだかなまめかしい、ペリカンマンゴーの甘い
河から名付けられない者
真空地帯の丸木舟である
精神の空位
高波
女が言うところの
夕空。
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