夏のメモリー
お盆休みに入る前日
同僚と 飲みに行く京阪電車は
県内で有名な進学高校のある
最寄駅で停車する
車窓から 何気に眺める向かいのホーム
線路を跨ぐ距離で目が合ってしまう
男の子
彼はベンチで 長い脚をひろげ
大きなお弁当箱を片手に
私から 視線逸らすと
箸を動かす
軽くウェーブする黒髪が優しくかかる額に
秀でた眉
きらめいている目を
お弁当へ落とす
「お母さんがクーラーボックスに入れて、お弁当二つ持たせてるんちゃう?」
「うん。塾行くと遅くなって、お腹空くしかな。」
両腕まくった 細長い躯の白シャツは
襟元も 広くボタンを外し
隣に居る少年と話す
若い口元が 光って見える
どことなく時代を離れた 笑い顔
(美しい人生が)
発車すると その姿は流れ去り
(かぎりない喜びが)
まるで秋の終わりの陽だまりに
通りがかりの美しい人を見染めた様な
夢見心地に浸る
何て、綺麗なんだろう!
( 第七連目、二行目と四行目は、たかたかし作詞「愛のメモリー」から引用連想しての表記です。)
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