鬼蜘蛛と私
鬼蜘蛛の
運命の糸で できている
巣が軒下でほのかにゆれています
この巣に掛かっている命と
今夜もゆれている私は
私と居る
鬼蜘蛛の、
ひんやりとした歌に
やわらかい耳をかたむけている
深深と
鬼蜘蛛の巣越しに
ゆっくりゆっくりと まわるように見える
星空の星星は瞬きながら ほほえんでいる
柱時計の
長針と短針が 善悪の無いほほえみと ほほえみ
それぞれの役目をしている
悪や善と言うのはヒトだけよ と 時間は一瞬じっとした。
私には悪があるからこそ善く生きたい。
善いと思うことがまるまる善いこととは限らない
それでも 命に従います それでも
それでもね ね ほ
ほおほおと近くの杉林で
ふくろう歌い始めて張りつめていた空気がしんなりする
今は黙礼をして今を通りすぎる
これらは私の住む世界のことなので
私にとっていつかのあなたは
お月さんのように遠く親しい
あなたが呼吸をしている未来に 何気ない今のことを忘れるだろう私の
覚えていることだけではなく
今をつくるのは さまざまな今よ
私のいない未来にも
この鬼蜘蛛の歌はそっと命に触れつつ軒下でほのかにゆれています。
命は原初から欠けている 故に、存在していることが ありがたい
感覚器官と共にある魂で気付くことができる命を
鬼蜘蛛は食べて糸にする
命は 命に支えられる命命を支える命魂という命
連なり
私と
命を見つめる
鬼蜘蛛
コメント
蜘蛛の巣とそれに私もかかったような、揺れるわずかな時間が、詩の世界にじっと、ありました。なかなか言葉にできなくてすみません。
timoleonさんへ timoleonさんがこの詩の世界と共にもっと言えばこの詩のいのちと共に揺れながら、それをこの詩とじっと在ってくださいまして、ありがたく思います。(私のほうこそ、大切なあなたさまのおこころを汲めずにいましたら、すみません)
いえいえ、詩をことばにするのは難しいと思います。少なくとも私には詩をことばにするのは難しいです。それをこうして作者へすてきに伝えて頂いたことを貴重に思います。ありがとうございます。
皆様へ 詩をさまざまに感じたり思ったりして頂ければ幸いです。
僕のしていることが鬼蜘蛛の巣をめぐらすことみたいなので、すっと読めました。
www (world wide web) のwebは蜘蛛の巣で、蜘蛛の糸なんて小説もあり、なんて思いながら読みました^^
りゅうさんへ ありがとうございます。この詩を自分のことのようにすっと読んでくださいましてありがたいです。
ああ、そうなのですねえ。蜘蛛についてのことを教えて頂いて面白く思います。ありがとうさま^^
大人の童話を読んでいるような読後感が残りました。善悪を決めたがるのは、ヒトだけですね。本当は、善も悪も、ヒトの裏表に混沌と潜んでいるのに…。最終連が印象に残ります。私と/命を見つめる/鬼蜘蛛
長谷川さんへ うむ、つっこんだご感想をありがたく思います。私には難しいことは分かりません。でもそうですねぇ思えば、自然(宇宙)の立場からすれば善も悪も無いのかもしれませんが、ヒトという存在の善と悪の性質は、ヒト特有のものかもしれないですね。「善悪を決めたがるのは、ヒトだけですね」と共感して頂いたり、印象的なところもあげてくださいまして、うれしいです。うん、ありがとうございます。