コンサート

久しぶりに好きなアーティストの
コンサートのチケットを買った
コロナ禍でたくさんの演奏動画を作ってくれて
すっかりファンになり
ファンクラブまで入ってしまった

何ヶ月も前から、スケジュール表に予定を書きこみ
何としてでもそこには予定が入らないようにして

初めてのホールだったので
行き方やかかる時間を調べて
準備は念入りに

当日は、夕方までに何としてでも
終わらせようと
いつになく仕事が捗った

早めにコンサートホールに着き
始まる前に、木の温もりを感じる
天井の高いカフェで、ほっと一息入れる
息子と軽食を食べながら
他のテーブルでは、同じコンサートに
いくと思われる二人連れが
楽しそうにお喋りしてる

楽しみなことが始まる前の
少しそわそわする、こういう時間が好き
自分のために時間を使っていることを
贅沢に思う
今、私は楽しんでいいんだと
自分に言い聞かせながら

会場に入るとそこは非日常の世界で
照明が明るくなると
今日の主役の女性ピアニストが
人魚のようなキラキラしたドレスで
眩しい笑顔でこちらに微笑みかける

そしてもう一人は、コンサートを企画した
笑顔の素敵な男性ピアニスト

祈るような気持ちで演奏を聴き
奏でられた宝石のような輝きの音楽は、素敵なホールの隅々まで響きわたる
だんだんと演奏者と聴衆と音楽が深まっていき
その人自身が演奏に現れているのを身体で感じ
聴衆と演奏者が一体となる

アンコールは
いつまでも聴いていたいような
夢の舟という曲で
今日は余韻に浸りながら
心地よく眠りに着けそう

帰り道は会場から出てきた
特別な日の装いの女性たちが
みんなキラキラして見える
年配の方から若い女性まで
決して煌びやかではないが
どの人も自分の中での特別な一枚を
着ているのがわかる

今日は妻でも母でもなく
仕事をしている私でもなく
日々をただひたすらに
生きている自分から少し離れ
みんないつもと違う自分になって
最後まで楽しみたいのだ

日々は決して楽ではないが
こういう日があると
また明日から頑張ろうと思えるのだ

今日ここに来られたことに感謝して
またいつか自分のために
コンサートにいこう