西日の記憶
鋭い鎌と業務用梱包テープ一巻き
それに、虫がいるから着ろ と
投げ渡された青ガッパ
炎昼、軽トラックから降ろされて
夕刻に迎えが来るまで
山裾の平原で 一人っきり
(知人の伝手で紹介された那須野の酪農ファームへ、ヘルパー志願してみた十六歳の晩夏)
農家で収穫終えたトウモロコシの穂を
根元から刈り取り三十本ずつ
しっかり縛って 束にするのだ
それを牛舎へ持ち帰り機械で細切れにして
サイロに詰め発酵させる
小柄な私に 畑はとてつもなくでっかい
細い腕で格闘する無我夢中のうち
身の丈越す穂の 上をあおぐと太陽が
休息していた
まるでディレクターチェアーへ深く腰を落とし
台本手にする映画監督の様な眼差しで
こちらを見て居る
あの沈黙は NGなのか?
それでも撮り直しなど出来ない
見返る畑には自分で刈り取ったスペースが
確かに出来ていて フツフツ湧いてくる嬉しさ
その時、私の魂の影が
照り映える金色の西日の先端に
つき刺さっていたのだった
コメント
リリーさんにとって、この詩に描写された西日が忘れられない記憶なのですね。それをこうして詩に起こしてすばらしいことだと思います。
この詩の臨場感を味わえました。すてきです。
@こしごえ
様へ
お読みくださってコメントを、どうもありがとうございます!(*´∀`*)
ご感想のお言葉、とっても嬉しいです!!⭐︎
この詩のタイトルは、最初「西と東」でした。作文から書き上げて、散文詩
にした内容を練るうちに、別のサイトで公開して、こしごえ様にお読みいただけ
ました「水琴鈴」の作品を産み出す源になった作品なのです。
だから、どちらにもコメントくださった事に感激しています。
遠いあの日…見た西日は、地図を持たない人生に、初めて知った「西」でした。
心に自分だけの方位磁針を、握る事が出来たのです。(^ ^)
ある種の肉体労働は成果が目の前にわかりやすく形となって現れるという充実感がありますよね。そういうことが(心象)風景の記憶として、「私の魂の影が
照り映える金色の西日の先端に
つき刺さっていた」と表現されているのが素晴らしいと思いました。
@あぶくも
様へ
あぶくも様に、この最終連を「素晴らしい」と感じていただけました事、
たいへん嬉しく思います!(о´∀`о)
最初に書きました作文から、散文詩へ連立てして構成しました間に何度も
原稿を寝かせました。そうして初めて、すんなりと…自分で納得出来た表現
なのです。
コメントを、お寄せくださりどうもありがとうございます!励みになります。(^ ^)