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11
「今年の鮎う　ちっこおてえ、」
小さい頃から毎年聞かされてきた
親父の秋を告げる声

12
魚屋の親父だけは
てやんでえ、と言いながら
いまでも娘の帰りを待っている

13
あれ以来だよ
夢で会うなんて　って
見ている側から食べるなよ

14
あぜ道　道草　帰り道
生まれくるもの帰り道
生まれゆくもの帰り道

15
夢　やぶれて　帰途
どこからか　いしころ一個の　うなり声
ずるいよ　まだ　帰れない

16
あの頃のようにこたえてくれないかい
夕焼けのコメットさん
日暮れが近いよ

17
あれから基地の中や夜の街や内地で働いたり
それでもたぶんみんな
吉じいのくれたキャンディーを忘れてないよ

18
もうあの日の僕は忘れていいかい
夕焼けのチケットさん
すっかり色も褪せてしまったのだから

19
ひとつずつでも足してゆければと思うんだ
ほら、夕焼けのカレットさん
まだここんとこにも隙間が

20
世界の偉い人達が島に来た。
この国の偉い人達は、おおわらわらしい。
島の偉い人達は自慢げで、
でも、愛する僕の家族はいつも通りだった。